「ペディキュアを貰いましたっ!」
どーん、と効果音が入りそうな顔で響が未来に見せたのはペディキュアの瓶だった。
小さな小瓶には、薄いオレンジ色の液体がたゆたっており、細かいラメが舞っている。
「誰にもらったの?」
「友里さん」
「そっか」
友里が使用するには些か明るい気がしたが未来はあえて口にしない。
屈むようにして小瓶の中を覗き込む。
「綺麗な色だね」
「でしょー」
「響に似合いそう」
「え?」
「え?って、え?」
響と未来は顔を見合わせる。
きょとんと同時に瞳が瞬いた。
「響が着けるんじゃないの?」
「未来に塗るつもりだったんだけど」
「え?」
「え?」
再び、二人の瞳が同時に瞬く。
「どうして私に塗るの?」
「似合いそうだったから」
「響の方が似合いそうだよ?」
「私のカラーを着けた可愛い未来が見たいから」
真顔でそんな事を言われては、もう未来は何も返せない。
頬を朱色に染めて溜息をつくように顔を隠す。
「…………卑怯だよ、その言い方」
「そうかもね」
本人も解っていたのか。
苦笑が響の顔に滲む。
「ね、塗らせてくれる?」
「……じゃあ」
ベッドに腰掛けて、未来は足を伸ばす。
タイツを脱いで素足を晒すと、響がその前に跪いた。
小瓶を振って液体とラメを混ぜて、響は蓋を捻る。
蓋の内側には透明な管が付いており、先端は刷毛になっていた。
「んじゃ、塗るね」
「……うん」
土踏まずにそっと響の手が添えられる。
ぴくんと小さく未来の肩が跳ねた。
「なんかどきどきするねー」
新しい遊びを覚えた子供のように響は楽し気だ。
未来の爪が一本、また一本とオレンジに染まる。
「あ、っと」
しまったという様な声と共に皮膚がオレンジ色に濡れた。
「ごめん。はみ出ちゃった」
「……後で除光液買ってくるから」
「そっか」
気を取り直して、響が塗り続ける。
未来の足の指が10本全て、オレンジ色に染まった。
響の手で染められた指を眺めながら未来は聞く。
「……似合う?」
「うん。凄く可愛い」
「……ありがとう」
満足気に破顔して、ペディキュアの蓋がきゅっと閉められる。
用が済んだ瓶がこつりと床に置かれた。
「ところで、未来」
「なぁに?」
「この体勢ってちょっと興奮しない?」
「……え」
片方がベッドに腰掛けて、片方は足元に跪く。
まるで主従関係のようにも見える立ち位置に響の笑みが深くなる。
「……ねぇ」
「な、なに……」
「他の場所も、塗ってみない?」
膝をついて響が身を乗り出す。
足首から膝裏へと掌が伝う。
「私の色を肌に乗せてみませんか?」
「…………っ」
「ね? ご主人様」
膝を突いて身を乗り出してくる響に未来は動けなくなった。

果たして主人と従者はどっち………?

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