リリカルなのは なのは×フェイト
金曜日, 12月 31st, 2010
リリカルなのは なのは×フェイトに1個追加しましたー。
タイトルは『いちゃいちゃ』だす。←もっと何か無かったのか。
今年最後の更新だすー。間に合った―(ほっ)
リリカルなのは なのは×フェイトに1個追加しましたー。
タイトルは『いちゃいちゃ』だす。←もっと何か無かったのか。
今年最後の更新だすー。間に合った―(ほっ)
目に沁みるような蒼が続く空の下に佇む白い校舎。
校舎の中は静かで、教室内では整然と並んだ机で生徒が授業を受けていた。
地球では至って普通の授業風景と、普通の女子中学校。
そのどこでも見かける中学校の屋上に、どこでも見かけない魔方陣が
浮かび上がった。
円を基調とした陣の周囲には、地球の言語にはない文字が白色に刻ま
れている。
そして、中心からフェイトが現れた。
ブレザーの制服を着たフェイトの手には学生鞄が持たれている。
金色の髪を揺らしてフェイトが一息つくと、魔方陣の近くにディスプ
レイが出現した。
『フェイトちゃん、無事に着いた?』
「うん。大丈夫。エイミィ、ありがとう」
ディスプレイに向かって、フェイトは言う。
『了解。じゃあ授業頑張ってね』
「ありがとう。エイミィもお仕事頑張ってね」
『了解了解。じゃあ、また夜に家でねー』
「うん。じゃあ、また夜にね」
軽くフェイトが手を振ると、ディスプレイは消えた。
次いで、魔方陣も消える。
目に沁みる青空が戻って来たのを見届けてから、フェイトは腕時計を見た。
「……次の授業から出ようかな」
あと10分で午後の最初の授業が終わる時間だ。
今から教室に駆け込むのも良いが、授業の用意を整えたら終了になり
そうで。
このまま屋上で時間を潰してから教室に行こうとフェイトは思う。
「あれ?フェイトちゃん?」
聞き慣れた声にフェイトは振り返る。
「え?なのは?」
屋上に設置されたベンチになのはが座っていた。
なのはに駈け寄りながら、フェイトは聞く。
「なのはどうしたの?今日は休みだって言ってたよね?」
「その予定だったんだけど、思ったより早く終わったから学校に来ちゃった」
少し照れた笑みを浮かべながら、なのはは言った。
「フェイトちゃんこそ、今日はお休みじゃなかったの?」
「そうなんだけど。ちょっと早く終わったから。一時間だけでも授業に
出ようかなと思って」
「じゃあ一緒だね」
「うん。一緒だ」
顔を突き合わせて、フェイトとなのはは笑う。
「じゃあ、なのはがここにいるのも?」
「きっと同じ理由だよ」
どうやらなのはも、先刻着いたばかりのようで。
フェイトと同様に授業が一段落するのを待っているようだ。
「じゃあ、一緒にいても良いかな」
「もちろん」
どうぞ、と腰をずらして、なのははベンチをフェイトに勧めた。
「ありがとう」
微笑んで、なのはの隣にフェイトは腰を落ち着ける。
ふっと、力を抜くと、肩に温もりが触れた。
「なのは?」
「んー。なんか久しぶりだなーと思って」
言って、フェイトの肩になのはは寄り掛かる。
「あ、うん。そうだね」
最近は、フェイトもなのはも忙しい日々が続いていた。
授業に出て、任務に出て、次の日の準備をして。
任務に出て、授業に出て、次の日の準備をして。
充実はしていたけれど、一日が過ぎるのは早くて。
こんな風になのはと二人でゆっくりするのは、本当に久しぶりな気がした。
「二人っきりも久しぶりだよねー」
思っていた事をそのまま口にされた、フェイトの心臓が跳ねる。
「そ、そうだね」
降って沸いたような幸運を実感したフェイトの目が泳ぎ出す。
周囲にはなのはとフェイト以外、誰もいない。
普段でも人が滅多に来ない屋上の上に今は授業中だ。
もし誰かいるとすれば自主休校組ぐらいだが、名門と呼ばれるこの学
園にはそのタイプの生徒はいない。
「ど、どうしよう……」
なのはに聞こえないようにフェイトは呟く。
嬉しいのに落ち着かない。
そんな矛盾した想いに駆られたフェイトから落ち着きが無くなった。
「フェイトちゃん?」
「え?あ、な、何、かな?」
「先刻からそわそわしてるみたいだけど、どうしたの?」
「そんな事、ない、よ」
「あるよ」
きっぱりと否定して、なのははフェイトの目を覗き込む。
近づいた顔に耐えきれないフェイトが視線を逸らした。
「ほら。やっぱり狼狽えてる」
「う、狼狽えてないって」
「じゃあ、こっち見て」
「うっ」
フェイトは言葉に詰まった。
気持ち的には、なのはを見たい。もの凄く見たい。
任務中でも会いたいと何度も思った。
けれど、いざその時が来ると緊張して見れない。
しかも、こんな間近では呼吸すらままならなくて。
心臓の音だけが空回りするように早くなっていく。
「フェイトちゃーん」
少し拗ねたような声が聞こえた。
びくりと身を強張らせたフェイトの料頬になのはの両手が触れる。
「はい。こっちを見る」
無理矢理首の位置を固定された。
間近のなのはの顔がフェイトを限界に追い込む。
「ちょ、ちょっと待って」
なのはを止めて、フェイトは胸ポケットに願う。
「バルディッシュ!」
ポケットの中でバルディッシュが輝いた。
次いで、フェイトとなのはの周囲を淡い球体が包み込む。
「魔法?」
「ふ、不可視の魔法…」
「それは解るけど。誰もいないよ?」
「わ、解ってるけど」
もごもごと口ごもりながら、なのはをフェイトは抱き締める。
「久しぶりだから……緊張します……」
「ふぇ?」
きょとんと、なのはの瞳が瞬いた。
抱き締める腕が、静かに力を強くなる。
「にゃはは。フェイトちゃん、緊張し過ぎー」
「だって…なのはが相手だもん…」
隠しきれない。
そう考えた本音をフェイトは吐露した。
「…うん。久しぶりだもんね」
瞳を細めてフェイトの背になのはは腕を回す。
久しぶりに感じるお互いの温もりを身体全体で確かめて、やがてゆっ
くりと離れる。
フェイトの瞳になのはが映り、なのはの瞳にフェイトが映って。
どちらからともなく瞳を閉じる。
そして―――。
「学校の屋上で何してんねん」
同時に固まった。
「は、はやてっ!」
「はやてちゃんっ!?」
しゃがんで冷めた瞳で二人を見据えるはやてに、フェイトは慌ててな
のはから身体を離す。
「は、はやて!授業は!?」
「とっくに終わっとるで」
言って、はやては深い溜息をついた。
「ほんでリインが魔力を感知しとったから様子を見に来たんや。したら、
なんや知っとる魔力が不可視魔法を使っとるやんか」
よいしょと、はやては立ち上がる。
「何しとるんやろうなーと思って、ちょおお邪魔させてもろたんや」
「き、器用だね……はやて」
不可視魔法の中に入ってくる技もさることながら、利用している本人
すら気づかせない、はやての芸当にフェイトは舌を巻く。
「で、何しとったん?わざわざ学校の屋上で、不可視魔法まで使って」
「え、えと」
見てたくせにあえて問うはやてに、フェイトは答えられない。
口ごもって困っていると、なのはがにこやかに言う。
「久しぶりの二人っきりを堪能かなー」
すっぱりはっきりと説明するなのはの頭上に拳が振る。
「阿呆。そんなんは家でやりっ」
「だって時間が余ってたんだもん」
「だからって学校でいちゃこらしてフェイトちゃんが暴走したらどない
すんねん」
「ちょっ!暴走ってどういう意味かな!?」
「あれ?フェイトちゃん、せえへん自信あったんか?」
「あ、あるよ。………………多分、だけど」
「どこがやねん」
消え入りそうな声に、すかさずはやては突っ込む。
つくづく見に来て良かったと思う。
「それより、二人とも授業に出るつもりで来たんやろ?」
「え、そりゃあ、勿論……」
「そろそろ移動せんと授業に間に合わへんよ」
「え?」
「あ、本当だ」
時計を見ると、間もなく最後の授業が始まる時間だった。
「いちゃこらは後にして教室行きやー」
ひらひらと手を振って、先に行くはやてにフェイトの顔が真っ赤に熟れる。
揶揄われる揶揄われて、再び訪れた二人っきりの空間に静寂はもう無い。
「もぅ……」
真っ赤に熟れた顔をフェイトは右手で覆う。
ただでさえなのはをまともに見られなかったのに、この状況では余計
に見れない。
居たたまれない面持ちで惑っていると、フェイトの肩がぽんと叩かれた。
「フェイトちゃん」
「えっ!?あ、な、何?」
「授業に行こっか」
「う、うん」
あさってを見ながら、フェイトは頷く。
そんなフェイトの腕を引いて悪戯っぽく笑いながら、なのはは耳元に
囁きを落とす。
「――――っ!」
砲撃のような威力のある囁き。
耳を押さえたフェイトは動く事すらままならなくなって。
呆然とするフェイトの頭上で、授業が始まるチャイムが鳴った。
ネタ元:某所の診断メーカー『中学校舞台にラブラブちゅっちゅななのフェイ』
これネタを考えるのに楽だわー(おい)
RTして下さった方、ありがとうございました!
某呟きの場所の診断メーカーで『2時間以内に6RTされたらおたく世界舞台で片想いフェイなのを書けという結果がでたので書いてみた。
6RTされなかったけど、某方がRTしてくれたので折角だから、ね。
でも片想いはどっかに飛んでった(爆)
それは何気ない、学校のお昼休みだった。
お昼御飯を食べて、のんびりとはやてが持ってきた雑誌を机に広げて。
アリサとすずかとフェイト、そして持ち主であるはやてを含めて四人。
一冊の雑誌を覗き込みながら、会話の花を咲かせる。
任務でなのはが不在なのが残念と思う気持ち以外は、 どこにでもあり
ふれた昼休みの出来事だった。
「ね、おたくって、どんな人なのかな?」
「は?」
問いたフェイトに、三人の視線が集まる。
「急に何を言い出すのよ」
「え、と。ここに書いてるあるんだけど」
訝しむアリサに、フェイトは雑誌の一部を指す。
フェイトが指したのは雑誌の柱に当たる部分。
そこには次回予告が掲載されており、おたくが勧めるメイドカフェ特
集!と記載されていた。
「有名な人なのかなと、思って」
「あぁ、そういう事ね」
どうやら「おたく」という名前の人物が勧めるお店の特集とフェイト
は思ったらしく。
「おたくは、人の名前じゃないわよ」
理解したアリサが訂正する。
「じゃあ、どういう意味?」
「おたく。って言うのはね……」
言って、アリサは考え込む。
「アリサ?」
腕を組んで考え込むアリサにフェイトは首を傾げる。
「ちょっと待ってて」
「う、うん」
聞きたそうなフェイトを止めて、アリサはすずかを呼んだ。
「どうしたのアリサちゃん」
「教えても良いのかしら」
「え?別に大丈夫じゃない?」
何か問題があるのだろうかと、今度はすずかが首を傾ぐ。
「でも、おたくよおたく。純粋なフェイトに教えるのは、何だか良心が
痛むわ」
「そこまでの事じゃないと、私は思うけど」
大仰なアリサにすずかは苦笑する。
「それに、後でなのはが知ったらうるさそうだし」
「それは……あるかも」
偏った過保護さと、余すことない独占欲を堂々と体現する今日は不在
の友人。
その人物の怒る声が聞こえた気がしたアリサとすずかが迷う。
先の事まで考えて悩む顔を突き合わせるアリサとすずかの横から、満
面の笑顔がしゃしゃり出てきた。
「しゃーないな。フェイトちゃん、私が教えたるわ」
輝かんばかりの生き生きとした表情に、アリサは慌てる。
「ちょっ!はやてっ!!」
「ええか、フェイトちゃん。おたくっていうのはな」
アリサに親指を立てて、はやては言う。
「膝の高さまでくらいのローテーブルの和名でな」
「それって、座卓、だよね?」
「ほな、学校とか出掛ける前に準備」
「支度?」
「冬に足を突っ込んで暖まる道具で、みかんがあると完璧」
「……こたつ、かな?」
「ほなドラマとかに出ている子供……」
「って、地味に離れてってるじゃないのっ!!」
はやての後頭部を景気よくひっぱ叩いてアリサは止めた。
頭を覆って、はやてが呻く。
「……アリサちゃん、今のは脳天に響いたわ……」
「あんたが馬鹿な事を言ってるからでしょ」
「ほな、ほんまの事を言うてもええんか?」
「うっ」
「あとで魔王が降臨するで」
「別にあんたほど私はなのはは怖くないけど、うるさいのは遠慮したいわ」
なのはを怒らせずに、フェイトの好奇心を満たす。
何か良い方法はないものか。
アリサとはやては頭を捻る。
「あ、そっか」
ふと、すずかがぽむ手を叩いた。
つつ、とフェイトに近づくと、にこりとすずかが微笑む。
「フェイトちゃん、おたくって言うのはね」
「すずか!?」
「まさかの真打ちかっ!?」
驚く二人にもにこりと微笑んで、すずかはフェイトに言う。
「一つの事に熱中する人の事を言うんだよ」
きょとんと、フェイトの瞳が瞬く。
「え、と。一生懸命な人って事?」
「うん。専門家の人みたいに詳しい一般の人。みたいな感じかな」
当たっているようで違っていて、違っているようで当たっている。
煙に巻くようなすずかの説明に、アリサとはやては舌を巻いた。
「…すずか、上手いわ」
「学者さんでも、化学おたく言うくらいやしな」
好きだからこそ追求する。
追求するからこそ、知識が深くなる。
狭く深く、どこまでも。
見えない底を探るように探求して行く。
物事に当たる姿勢は学者とおたくに差は無い。
「そっか。凄い人の総称なんだね」
感心した様子のフェイトに、はやてはアリサに言う。
「若干、間違って認識しとらへんか?」
「この際少しくらいの過ちは目を瞑るわ」
些か語弊がある説明を鵜呑みにするフェイトにはやてとアリサは口を噤む。
すずかの機転で事なき得た二人がホッとしたのも束の間。
「私もおたく目指してみようかな」
とんでもない爆弾をフェイトは落とした。
「ちょっ!」
「フェイト!それは駄目!!」
「え?」
慌てて止めるアリサとはやてにフェイトは目を瞬かせる。
「アリサ、どうして駄目なの?」
「当たり前でしょ!おたくなんか目指してどうするのよっ!?」
「だって、凄い人の事なんだよね?」
「そ、それは…確かに色々なイミで凄い人達だけど…。でもあんたがな
るのは却下っ!」
「どうして?」
「どうしてって……」
ぐっと、アリサが言葉に詰まる。
ここで本当に意味を教えれば、フェイトは納得するだろう。
しかし、それでは折角取り繕ってくれたすずかの努力が無に帰す。
そして、後日なのはが知れば、もっと厄介な事になるのは目に見えている。
「あかん……確実に魔王が降臨するわ」
観念したはやてが胸の前で十字架を切る。
「え、と。フェイトちゃん、何か熱中している事があるの?」
純真無垢な瞳の威圧に押されるアリサとはやてに代わってすずかは聞
いた。
「んー、どうだろ」
目指す目標をフェイトは考える。
「執務官だから法律のおたく、とか」
「それはおたくにならへんで」
現状を鑑みたフェイトをはやては却下する。
「でも、私なりに頑張ってるつもりだよ」
「そうやのうて。順序がちゃうねん」
「順序?」
「フェイトちゃんは執務官はなりたいと思ったから法律やら何やらと勉
強したんやろ?」
「うん」
「おたくはな、法律が好きやったから執務官になるんねん。執務官にな
りたいから法律を勉強するんはおたくとは言わへん」
「む、難しいんだね」
「要は好きが高じた結果が職業なのよ」
「そうなんだ……」
だとすると、はやての言う通り、執務官の職は定義に当て嵌まらない。
「夢中になれそうな事……」
真剣に悩むフェイトに、三人は顔を見合わせた。
おたくになって欲しい訳ではないけれど。
ここまで悩まれると、責任を感じずにはいられない。
「フェイトが夢中になれて、害にならなそうな事ねぇ」
アリサはアリサなりに。
「フェイトちゃんが寝食も忘れそうな事かー」
はやてははやてなりに。
「フェイトちゃんの大好きなもの……」
すずかはすずかなりに。
三者三様考える事、およそ5分。
「あっ」
「せや」
「これしかないかな」
再び、三人は顔を見合わせた。
言葉は、ない。
苦笑やら溜息やらの表情で同じ結論に行き着いた事を語り合う。
「あー、フェイトちゃんや」
代表として、はやてがフェイトの肩を叩いた。
「安心しぃ。フェイトちゃんは十分、おたくや」
「え?」
三人の顔を不思議そうに見回すフェイトに。
「あんたは、なのはおたくよ」
アリサは言った。
おたくは頂点を極めると先生とか専門家になります(と思ってます。個人的に)
書いてて胸が痛い方は挙手(おい)
元ネタ:某呟きの場所の診断メーカーで『2時間以内に6RTされたらおたく世界舞台で片想いフェイなのを書けという結果が……。
6RTされなかったけど、某方がRTしてくれたので折角だから、ね。
でも片想いはどっかに飛んでった(爆)
ずっと更新ないのもアレなので(^^;
リリマジで出したペーパーを載せてみました。
リリカルなのはの『なのは×フェイト』に載せてあるのに興味ある方はだうぞ。
劇場判のDVDも出したので多分旬!でも書いたのは劇場で見て直ぐだからびみょー記憶が…。
カーテンの隙間から差し込む月光が、蒼く淡い直線をベッドに向かっ
て描いている。
その中で、佇むような人影が一つ、ぽっかり浮かび上がってた。
白いパジャマの腰まで伸びる長い髪は、月光に負けない金色をしている。
窓に顔を寄せて見上げる顔は、淡さのせいかやや憂いを帯びていた。
どこを見るとも無しの視線は月を眺めているのか、それともその周囲
に散りばめられた星を見ているのか。
ただただ黙って、フェイトは夜空を見上げている。
「…………ん」
後ろからくぐもった声が、ふとフェイトの耳に届いた。
振り返ると、ベッドの上でシーツがもぞもぞと動いている。
「フェイト、ちゃん……?」
眠そうな声に呼ばれて、フェイトは微笑む。
「ごめん、なのは。起こしちゃったね」
言って、窓際からフェイトは離れた。
月光の絨毯を歩みながら、ベッドに戻る。
「まだ起きるには早いから寝てて良いよ」
ベッドに腰掛けて頬を撫でると、その手をなのはに掴まれた。
軽く引いても、自身の頬に着けたまま、フェイトの手を離さない。
「なのは?」
不思議そうに首を傾げるフェイトに、ぽつりとなのはは言う。
「手、冷たい」
「え?」
「どれ位、窓際にいたの?」
起き抜けとは思えない、はっきりとした声は怒りを含んでいた。
夜の寒さとは異なる寒気を感じながら、フェイトは答える。
「じゅ、十分位、かな……」
「どれ位の時間。いたの?」
躊躇した返事は、余計に怒りを触発したらしく。
なのはの声に厳しさが増す。
「どれ位の時間、窓際にいたの?」
「……一時間、くらい、だと……思います」
正直に、フェイトは白状する。
「もぅ!風邪引くでしょっ!」
こういう時のなのはは強い。
普段から強いけれど、凄みが増して、もっと怖い。
「ご、ごめん、なさい」
身体と記憶に染み込んでいる恐怖に思わずフェイトは逃げ腰になる。
けれど、そこで逃がしてくれるなのはではない。
捕らえられた手を逆に引っ張られて。
気づけば、すっぽりとベッドにフェイトは収まっていた。
「ほら、体もこんなに冷たくなってる」
言って、フェイトをなのはは抱き寄せる。
「……なのは」
暖かかった。
なのはの体温で暖まったベッドの中よりも、お互いのパジャマ越しに
感じる温もりの方がとても暖かい。
冷えた体に、優しさが染み込む。
「……どうしたの?」
囁くような声が、フェイトに聞いた。
「嫌な夢でも見たの?」
先刻までの怒気を全く感じさせない声が、フェイトを案じる。
抱き締める腕の力は、変わらない。
穏やかで、包む様にフェイトの背を抱いている。
逃げようと思えば逃げられる拘束は、強要しないという合図だ。
泣きたくなる優しさに、フェイトは、グッと涙を堪える。
あやす様に背中が二度と叩かれた。
「まだ起きるには早いよね。もう一眠りしよっか?」
言いたくないのだと、判断をしたのだろう。
明るい声が、フェイトに逃げ道を指す。
「フェイトちゃんの体も温かくなってきたし、このまま一緒に寝れば、
きっと風邪も引かないよ」
先刻よりも強い力が、フェイトを抱き締める。
なのはの胸元に額を押しつけながら、フェイトは小さく息を吐いた。
このまま眠ってしまえば、もうなのはは何も聞かない。
朝になったら、おはようと言って、何時もの笑顔を向けてくれる。
夜になったら、お帰りと言って何時もの他愛ない会話をしてくれる。
それで良いのかもしれない。
目覚めた理由を話したら、きっとなのはは困る。
嫌な思いもさせてしまう。
そんな思いは、絶対になのはにはして欲しくない。
だからこのまま眠ってしまうのが最良の選択だ。
解っている。
解っているのに、どうして聞いて欲しいと思ってしまうのだろう。
肯定して欲しい訳じゃない。
否定して欲しい訳じゃない。
ただ、聞いて欲しい。
何も言わなくても良いから、聞いてくれるだけで良いから。
話がしたいと、フェイトは思う。
「……なのは」
なのはを軽く押して、フェイトは体を離した。
「聞いてくれる、かな?」
「……フェイトちゃんが、話したいなら」
「ありがとう」
薄く笑って、フェイトは体を起こした。
温もりを知った体に夜の冷気は辛い。
寒さには慣れている筈なのにと、自嘲が自然に浮かぶ。
「夢、見たんだ」
息を吐く様に、フェイトは言った。
「プレセア母さんの、夢」
ピクンと、なのはが反応した。
シーツを伝う振動に、フェイトは微笑む。
「嫌な夢、じゃないよ」
大丈夫と言っても、なのはの瞳から心配の色は消えない。
なのはの掌がフェイトの手を包む。
その手を握り締めて、フェイトは続ける。
「私ね、ずっとプレセア母さんには嫌われていたでしょ」
プレセアの子供であるアリシアのクローンとしてフェイトは生まれる
予定だった。
けれど似たのは容姿だけで、利き腕も資質も全く異なってしまった。
似て非なる存在。
それが、余計にプレセアを苛立たせた。
「まだ小さかったけど、本当は解ってたんだ」
笑ってくれない母親に少しでも笑いかけて欲しくて、嫌な事も辛い事
も頑張っていたけれど。
嫌われている事に気づいてた。
ただ認めたくなかっただけだ。
「それでも、本当に嫌いだと言われた時は、凄くショックだった」
アースラに保護されて、通信越しではっきりとプレセアに嫌いだと告
げられた時は、見たくない現実を突きつけられた気がした。
ショックで自身を喪失して、何もかもがどうでもよくなって。
呼吸すらも、どうでもよかった。
「でもね、今はちょっとその考えは違っていた。と思ってるんだ」
それまで黙っていたなのはが、ゆっくりと体を起こした。
辛そうに寄った眉に、やっぱりという気持ちが浮かんで、ごめん、と
フェイトが囁く。
「……どんな風に、変わった、の?」
「最後だけは……。あの瞬間だけは、私はプレセア母さんに好きになっ
てもらえた気がするんだ」
時の庭園が崩れ落ちる時。
プレセアはアリシアと共にアルハザードに旅立った。
あの別れる瞬間だけは、娘として見てくれた気が、フェイトはする。
「どうして、そう思ったの?」
なのはの疑問に少し考えて、フェイトは言う。
「目、かな」
「目?」
こくりと、フェイトは頷く。
「執務官として色々な事件に関わっているとね。子供を嫌っている親に、
時々だけど、会うんだ」
朝夕問わず子供を詰る母親。
子供の顔が腫れるまで暴力を続ける父親。
泣き叫ぶ子供を部屋に閉じ込める両親。
「本当に、子供を嫌う親って、いるんだ。って、ね」
悲しい事で、在ってはならない話だけれど。
そういう親がいるのが現実だ。
「でも!そんなお父さんやお母さんばかりじゃないよっ!」
「うん。解ってる」
叫ぶ様に否定するなのはに、フェイトは微笑む。
「そういう人は一部で、優しいお父さんやお母さんが沢山いるよ」
自分の身を省みずに子供を心配する母親。
どれだけ辛くても必死で子供を助けようとする父親。
子供の元気な姿に涙を浮かべる両親。
そんな普通の父親や母親も大勢、いや、殆どの親は優しく子供を慈し
んでいた。
「私も、リンディ母さんに助けられてるから、ね」
ジュエルシード事件が終わって、行き場を失ったフェイトをリンディ
は、引き取ってくれて。
クロノと変わらず育ててくれた。
幸せだった、と思う。
そして、運が良かったのだと、痛感してしまう。
「フェイトちゃん……」
眉根を寄せたまま、なのはは聞く。
「お仕事、辛い?」
「辛くないと言ったら、嘘になるけど。そればかりじゃないから、後悔
はしてないよ」
目を背けたくなる凄惨な現場や、憤りと悔しさだけが残る事件も多い
けれど。
それ以上の喜びも多い。
「執務官になって、良かったと思ってる」
当人であるフェイトよりも苦しそうな、なのはの頬を撫でて、一つキ
スを落とす。
「それにね。執務官になったから、こんな風に思えるようになったんだ」
明るく言って、プレセアをフェイトは思う。
「少しだけでも、母さんに好きになってもらえたんだって」
体罰を受けていた時や、アースラで嫌いだと言われた時のプレセアの
瞳は冷たくて、フェイトを見ていなかった。
どれだけ必死になっても、決して振り返ってはくれなかったのに。
別れる時の瞳は、違った。
もう十年以上も前の事だけれど、はっきりと覚えている。
嫌いだと言う声は、フェイトを想っていた。
どこにでも行けば良いという瞳は、母親の優しさを宿していた。
冷たさと暖かさの両方を知ったからこそ気づける違い。
なのはやリンディに出会わなければ、きっと気づけなかった。
執務官にならなければ、ずっと知らなかったかもしれない。
「私の勘違いかもしれないけど、ね」
言って、フェイトは肩を竦める。
この考えはあくまで推論でしかなくて、プレセアが傍にいない以上、
フェイトに確かめる術はなくて。
ただの自己欺瞞かもしれない。
「……ごめんね。フェイトちゃん」
ぽつんと、なのはが言った。
「私にはプレセアさんの考えは解らない」
「うん」
それはそうだろう。
なのははなのはであって、プレセアではないのだ。
「それに、フェイトちゃんにしてた事は……私は許せない」
「そうだね」
プレセアがずっとフェイトに行っていた行為は、はっきり言って虐待だ。
フェイトはそう思ってはいないけれど。
フェイトとなのはの立場が逆だったのならば、同じ事を思うだろう。
「でも、フェイトちゃんの考えは間違ってないと思うよ」
言って、フェイトの手をなのはは取った。
暖めるように両手で包んで、なのはは唇で触れる。
そんな祈るような、なのはにフェイトは聞く。
「どうして、そう思うの?」
「フェイトちゃんだけが解る、プレセアさんの気持ちもきっとあると思
うから」
「私だけが解る……プレセア母さんの、気持ち……?」
「私とフェイトちゃんだけの繋がりがあるように。フェイトちゃんとプ
レセアさんだけの繋がりがあるから」
こんな風にと、包んでいた手を解いて、なのはは指を絡める。
「だって、フェイトちゃんはプレセアさんの子供だもん」
最後の時にどんな情をプレセアが持っていたのかは、知れない。
けれど、家族だけが解る、思いがある。
「信じてあげて」
腕を引いて、フェイトをなのはは抱き締めた。
「プレセアさんを。フェイトちゃんが感じている思いはきっと本当の事
だから、信じてあげて」
「……なのは」
凭れ掛かるように、なのはに体を預けて、フェイトは瞳を閉じる。
肯定されたかった訳じゃない。
否定されたかった訳じゃない。
ただ、話したかった。
楽しい話じゃないと解っていたけれど。
なのはに聞いて貰いたかっただけだ。
「ありがとう……」
出会えて良かった。
傍にいてくれて良かった。
心から、本当に心から、そう思う。
なのはの背に腕を回して、フェイトは抱き締める。
暖かい。
泣きたくなるなるような優しさに、静かに涙が流れる。
自己満足かもしれない。
ただの勘違いだと言われるかもしれない。
それでも、もう一度出会えたのなら。
再び巡り会えたのなら、伝えたい。
心から感謝の気持ちを込めて。
生んでくれて、ありがとう。と――。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
リリマジで出したペーパーの内容だす。
・・・ペーパーっつても、5枚綴りだったんだけどね。