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リリカルなのは フェイト×なのは

火曜日, 1月 27th, 2009

リリカルなのはのフェイト×なのはに一本追加しましたー。
『夜空-フェイト-』
だす。
って、あれ?まこ亜美が先に上がる予定だったのに・・・あれ?
すんません。次はまこ亜美をあげます・・・。

夜空-フェイト-

火曜日, 1月 27th, 2009

 事件もなく、平穏な時間が流れる夜は、とても静かだった。

 宿舎の屋上から見下ろす街は明るく、その一つ一つが平和を物語っ

ている。

 まるで星を散りばめたような地上の光景から空へと視線を移すと、

本当の星が無数に瞬いていた。

 その中で輝く大きな円。

 地球よりも大きく、他の次元よりも眩しい満月は夜空の中で一際

輝いている。

 手摺りに凭れて、その輝きをフェイトは見上げた。

 暗い夜空の中に浮かぶ月は、星々の光を寄せつけない。

 誰よりも明るく、何よりも優しい。

 それは、フェイトにとって大切な存在を思い出させる。

「蒼い空が一番そっくりだけど、ね」

 空と同じ彩の瞳を携えて駆ける姿はとても綺麗で、見ている人に

勇気をくれる。

 その笑顔を何時までも見ていたいと思った。

 一緒に空を駆けたいと感じた。

 けれど。

 その心に惹かれたのは何時からだろう。

 傍にいるだけでは満たされなくなった。

 手を繋ぐだけでは物足りなくなった。

 もっと傍に。

 誰よりも近くにいたいと考えるようになったのはどうしてだろう。

「我が儘だな……」

 息を吐いて、視線を足下にフェイトは落とした。

 始まりをくれただけでも十分なのに。

 親友でいてくれるだけで嬉しいのに。

 それ以上を望むのは贅沢だと解っているのに。

 もっと傍に、いきたい。

 どうしても想ってしまう。

 好きだ、伝えたい、と。

 考えてしまう。

 空に浮かぶ明かりがフェイトの足下の影を長く伸ばして行く。

 それを視線で追うと、先端で異なる影に重なっていた。

「こんなところにいたんだ」

 優しい声がフェイトの耳に届いた。

 柔らかく、穏やかな。

「フェイトちゃん」

 己の名を呼ぶ愛しい声。

 ゆっくりフェイトは顔を上げた。

「なのは」

 優しい微笑みが視界に広がる。

「部屋に帰って来ないから探しちゃったよ」

「あ、ごめん……」

「謝らなくてもいいよ」

 苦笑して、なのははフェイトの元へと歩いて来る。

「何してたの?」

「ん……空、眺めてた」

 視線を上に上げると、隣に来たなのはも顔を上げた。

「そっか。今日はお星様が綺麗だもんね」

 夜空を眺めるその顔は、とても嬉しそうで。

 妬ける気がフェイトはした。

「なのはは、やっぱり夜空も好きなの?」

「そうだね。夜の空も好きだよ」

「……そっか」

 短く返したフェイトの胸を少し痛む。

 空が大好きだった女の子は大きくなっても空が一番で。

 一度墜ちてもその気持ちは変わらなかった。

 だからこそ、不屈の精神でもう一度戻って来れたのだけれど。

 勝てない大きな存在が悔しい、とフェイトは思う。

「…でもね」

「ん?」

「空よりも…お月様の方が好き、かな」

「そうなの?」

「うん」

 はにかむ様に笑う顔は頬が少し赤い。

 どうしてだろう。

 不思議に思いながら見つめていると、視線が再び空へと戻された。

 追うようにフェイトもまた空を眺める。

「フェイトちゃんは」

「ん?」

「フェイトちゃんは、お昼の空と夜の空と、どっちが好き?」

「私は……昼の空、かな」

 蒼く澄んだ空は、君の瞳と同じ彩。

 眺めるだけで幸せな気持ちになれる優しい色だから。

「昼の、蒼い空が好きだよ」

「……そっか」

 声が少し沈んだ気がした。

「なのは?」

「ん?何?」

 問い返す声はもう普通だった。

 気のせいだったのかもしれない。

 けれど、見つめてくる瞳は揺れていた。

 今にも泣き出しそうに見えて。

 無意識のうちに伸びたフェイトの腕がなのはの腕を捕らえる。

「フェイトちゃん?」

「………なのは」

 気づけば、引き寄せて、なのはを抱き締める己がいた。

 甘い香りが鼻腔を擽り、胸が疼く。

「どうしたの?」

「なんでもない…」

 嘘だった。

 胸が痛くて、呼吸が苦しい。

「辛いことでもあった?」

「なにもないよ……」

 辛い。

 打ち明けられない想いで胸が軋んで辛い。

「嫌なことでもあった?」

「……大丈夫だよ」

 嫌だ。

 諦められない心が、なのはを望んで止まない己が嫌だ。

「フェイトちゃん」

 そっと、フェイトの背になのはの腕が回された。

 抱き締められた体が、ほわりとした温もりで暖まる。

「私は、いつだってフェイトちゃんの隣にいるから……大丈夫だよ」

 嬉しくて、悲しい、優しさ。

 たとえ体の距離が離れても。

 心は、隣にいてくれるから。

 想いを、何時も伝えてくれるから。

 気持ちが切り離せない。

「もうちょっと……このままでも、いい、かな……」

「フェイトちゃんが望むなら……このままで、いるよ」

「ありがとう……なのは」

 抱く腕に力を込めると、背に回った腕が同じだけ返して来る。

 頭を垂れるように肩口に額を擦りつけ、祈るようにフェイトはな

のはだけを想う。

 想いが伝わりますように、と。

 この気持ちが伝わりませんように、と。

「でもね、フェイトちゃん」

 耳元で名前が呼ばれた。

 声が震えているのは気のせいだろうか。

「私は、月が、大好きなの」

 落とされたのはまるで謎かけのような囁き。

 なのはが何を伝えたいのか。

 解るような、解らないような、もどかしい感覚にフェイトは捕ら

われる。

「それだけは、覚えていて、ね」

 けれど、訊ねる勇気は持てなかった。

「……うん」

 小さく頷くのが精一杯だった。

 溢れそうな雫を堪える、明るい月の下。

 重なる影だけが、照らされ、映えていた。

 


なのは系は今のとこギャグしかない(爆)ので切ない話にしてみましたた(当社比)
切ない話こそうちの真骨頂!(希望的観測)
なのは×フェイトになのはさん視点も書く予定だす。

アンケートを一部変更

日曜日, 1月 25th, 2009

沢山の方がぽちぽちして頂けたのに申し訳ないのですが、サイドバーに付けているアンケートから「舞-HiME(静留×なつき)」を解除いたしました。
理由は何というか・・・・・・・。
うちの傾向を読んで♪ みたいなー・・・。
静留×なつきが好きなのは解るんですけど、こんな辺境地でそれを望まれましてもね。
ちょっと難しいです。はい。
そんな訳でぽちぽち数を記録させて頂いた上で、一旦「舞-HiME(静留×なつき)」のアンケートは解除させて頂きます。
ただ、沢山の方がぽちぽちして頂けてますので、うちの傾向に沿った何かは考えたいと思いますm(__)m

リリカルなのは フェイト×なのはに一本追加

木曜日, 1月 22nd, 2009

リリカルなのはのフェイト×なのはにSSを一本追加しました。
タイトルは。
『専用』
です。
色々とごめんなさいな感じのSS(主にはやて)

専用

木曜日, 1月 22nd, 2009

「なのはちゃーん。胸触らせてー」

 突然、なのはとフェイトの部屋を訪れたはやての開口一番はこれ

だった。

 時刻は一日の仕事も終わって、まったりした夜中前。

 あと少し時が経てば、明日が来るというのに。

 今日の最後で親友は何を言い出すのか。

 丸くなった瞳のままで、なのはは聞いた。

「……はやてちゃん。何しにきたのかな?」

「ん。胸を触りに来た」

「おやすみなさい」

「ちょっ!半分冗談やって!」

「それって半分本気ってことでしょっ!」

 扉を閉めようとするなのはに、慌てて入り口の境目に足をはやて

は入れる。

「はやてちゃん卑怯だよ!」

 安全装置が働いた扉は、なのはが閉めようとしても扉は閉まろう

としなかった。

 人の安全を一番に考慮した装置が恨めしい。

「親友のお茶目な冗談で門前払いしようとするからや!」

「はやてちゃんの冗談は冗談じゃない時が多いんだもん!!」

 身の安全を最優先にして、部屋に入れまいとするなのはに、はや

ては言う。

「や、マジで!……少し話相手になってくれへん?」

「はやてちゃん?」

 声色が変ったはやてに、なのはは扉を閉めるのを止めた。

 第一声がとんでもない台詞だったせいで、冷静に見ていなかった

が、よくよく見ると笑っている顔には陰が落ちている。

「はやてちゃん、何時まで会議だったの?」

「つい、先刻まで」

 会議があると、はやてが本局に行ったのが確か六時前。

 単純計算でも五時間は経過している。

「疲れてるんだね」

「主に頭がな」

 にやついた笑いが乾いた笑みに変った。

「あー、もー何で上の連中はあんなに頭が固いねん」

 天を仰ぐように、愚痴るはやてを珍しいと、なのはは思う。

 何時も水面下の努力を片鱗も浮上させないのに。

 一言とはいえ口にするという事は、それだけ会議は難航して、平

行線を辿っていたのだろう。

 ふぅ、と息を吐いて、なのはは道を開けた。

「いいよ。中に入って」

「ほんま!?触らせてくれるん!?」

「そうじゃなくて」

 言うが早いが、伸びてきた手を軽く、なのはは叩く。

「疲れてる時は甘い物が一番。はやてちゃんにキャラメルミルクを

ご馳走するよ」

「えー。私としては、こう、弾力があってふくよかな母性愛の方が

疲れが取れるんやけど」

「今すぐ帰る?」

「お邪魔します」

 きっちり九十度のお辞儀をするはやてに、苦笑してなのはは部屋

へと招き入れた。

「あ、でもヴィヴィオはもう寝てるから、静かにしてね」

「了ー解」

 こういう時のはやては安心出来る。

 足音を殺してくれるはやてに微笑んで、なのははリビングへと案

内した。

「はやてちゃんはソファーに座ってて」

「何か手伝おか?」

「手伝ったら疲れをとりにきた意味ないよ。いいから座ってて」

 はやてを無理矢理ソファーに座らせて、なのははキッチンへと向

かう。

 ミルクパンを用意して準備を始める背中を眺めて、はやてはソファ

ーに腰掛けた。

 リビングのテーブルにはマグカップが一つ、置かれている。

 まだ上る湯気からは甘い香りがした。

 恐らくマグカップの中身もキャラメルミルクなのだろう。

「フェイトちゃんはまだ帰ってへんの?」

「うーん。もうすぐ帰って来るんじゃないかなぁ」

 ミルクパンをコンロに置いて、なのはは答える。

 牛乳がゆっくり注がれた。

「ほな今はなのはちゃん一人占めできるんやね」

「にゃはは。何それー」

「やって、すっかりフェイトちゃん専用なんやもん」

 少し拗ねたような声で言われて、なのはの頬が赤く染まる。

「べ、別にそういうつもりは、ないよ……?」

「えっ!浮気しとるん!?相手誰!?」

「……………専用でいいです」

 後ろから聞こえる嬉々とした声に、色々となのはは諦めた。

 その間に、キャラメルミルクはできあがり、ミルクパンから甘い

匂いが立ち上る。

 コンロの火を消して、マグカップに移し替えて、なのははリビン

グへと戻った。

「熱いから気をつけてね」

「ありがとう」

 香りを楽しんで、マグカップに口を付けるはやての前になのはは

座る。

「あー和むわぁ」

「良かった」

 肩の力が抜けるはやてに、なのはもまた安心する。

 飲みかけだった自分のキャラメルミルクは少しぬるくなっていた

けれど。

 気にせずに、一口含んで。

「後はなのはちゃんが胸を触らせてくれたら元気百倍や」

 吹きそうになった。

「ん?どないしたん?」

 不思議そうなはやてに手で待ってと告げて、なのはは咳き込んだ。

 胸元を擦って、ケホと咳を一つ落として、はやてをなのはは見た。

「……まだ諦めてなかったんだ」

「当然!」

 拳まで握られると、もう苦笑いしか返せない。

「何でそんなに胸にこだわるかなぁ」

「至福の一時だから」

「そんな事はっきり言われても」

「ほんのちょっとでええんやって」

 指を怪しく蠢かしてテーブルから身を乗り出すはやてから、なの

はは身を引く。

「何で逃げるん?」

「いや、普通逃げるから」

「減るもんでもないやん」

「だからって無闇に触らせるものでもないでしょ」

「むー。……ほんまに駄目?」

「駄目」

「ほんまに?」

「本当に」

「むー…」

 お預けを食らう犬のように、テーブルの端っこに指を掛けて唸る

はやては、しぶとい。

 仕事中ならその粘りも感心するけれど。

 今はどうにも困る根性でしかない。

 何とか諦めてくれる方法を思案するなのはの視線が、ふと、一点

を見つめた。

 ふわりとした柔らかい微笑みが浮かぶ。

「ね、はやてちゃん」

 テーブルに両肘を突いて、指を絡ませながら、なのはは聞く。

「そんなに私の胸を触りたいの?」

「触りたい」

「じゃあね。ちょこっとだけなら良いよ」

「ほんまに!?」

 許可が貰えると思っていなかったのだろう。

 嬉々とした笑みがはやてに浮かぶ。

「ほな、気が変わらんうちにお願いするわ」

 言うが早いが、中腰になったはやての手がなのはに伸びる。

 しかし、怪しく動く指をなのはは見ようとしなかった。

「でもね、はやてちゃん」

 視線はその上。

 はやての頭上に向けたままで。

「命がけになるけど」

 なのはは微笑む。

「それでも良いかな?」

 ぴたりとはやての動きが止まった。

 目的地までは、あと数十センチ。

 なのに、はやては中途半端に伸ばした手を、引くでもなく進める

でもなく、動かそうとしない。

 こくりとはやてが息を飲んだ。

 上下した首に当たる、硬質の何か。

 それは、とても薄く、でも細胞に食い込むように鋭い。

 はやての頬に冷や汗が伝う。

 そんなはやてを余所に、なのはは優しい声で言った。

「おかえりなさい。フェイトちゃん」

「ただいま。なのは」

 はやての頭上から嬉しそうな声が返る。

「遅くなってごめんね」

「ううん。お仕事だから仕方ないよ」

 冷や汗で濡れるはやての頭上で、ほのぼのとした甘い空間が漂う。

 その空間を決して壊さないように最大限の努力をして。

 身じろぎ一つせずに、はやては口を開いた。

「……あー、と。フェイトちゃん……」

「何かな。はやて」

「バルディッシュをハーケンフォームにしての帰宅はどうかと思う

んやけど」

「いつもはしないよ」

「後ろから親友の首に刃を当てるのも如何なもんかと」

「それも普段はしてないよね?」

「ほな、バルディッシュを待機に戻してくれへんかな」

「はやてがなのはに何をしようとしてたのか教えてくれたら考える」

「その場合、私の身の安全は保障してくれるんかな?」

「手元が狂うような内容じゃなかったらね」

 口を真一文字にはやては結ぶ。

 言ったら最期。

 首に感じる金色の鎌が横一線に動く事請け合いだ。

 動くことも出来ず、話すこともままならず。

 微動だにしないままでいるには辛い腰を浮かした状態で、はやて

は固まる。

 泣きそうな顔でなのはに助けを求めると、はやてはにっこり微笑

まれた。

「はやてちゃんね、疲れてたからキャラメルミルクを飲みに来たん

だよ」

「あれ?それだけ?」

 上から覗き込むフェイトに首を動かせないはやてが瞬きで応じる。

 そっか、と呟くフェイトの気配が柔らかくなっていくのを感じ、

これでこの命の橋渡しから解放されると思ったのも束の間。

「でも、それだけじゃ物足りなかったみたいなの」

「なのはちゃん!?」

「私の胸が触りたいんだって」

「………へぇ」

 一気にフェイトの殺気が開放された。

「はやて、そんな事をしにわざわざこんな夜中に部屋まで来たんだ」

「フェ、フェイトちゃん。話し合お。話せば解る……って、刺さっ

とる!首に線が付きそうになっとる!!」

「あぁ、ごめん。ちょっと手元が狂いそうなんだ」

「暢気に言わんとって!洒落にならへんから!!」 

 騒がずにはいられない生死の境に立たされているはやてに、なの

はは自分の唇に人差し指を立てる。

「駄目だよはやてちゃん。騒ぐとヴィヴィオが起きちゃうよ」

「なのはちゃん!突っ込む場所がちゃうっ!!」

「なのは、ヴィヴィオはもう寝てるかな?」

「うん。フェイトママが帰って来るまで頑張る!とは言ってたんだ

けどね」

「……そっか。また間に合わなかった、か……」

 深夜のこの時間では仕方ないと解っていても、愛娘が起きている

うちに帰って来れなかったフェイトはがっくり肩を落とす。

「フェイトちゃん力抜けとる!角度がマジでヤバなっとるっ!!」

「だからフェイトちゃんも。しー、だよ」

 再び唇に人差し指を立てるもう一人のお母さんに、こくんとフェ

イトは頷いた。

「うん。はやて、部屋の外で話そう。…そうだな、訓練場とかどう

かな」

「……あの、もの凄く遠慮したいんやけど」

「さ、行こうか」

 返事は聞いてない、と言わないばかりにはやての首根っこを掴む

とフェイトは無理矢理立たせる。

 同時に、バルディッシュがスタンバイモードに切り替わった。

 ハーケンフォームのままでの外出はまずいと思えるだけの理性ぐ

らいは残っていたらしい。

「フェイトちゃん、その冷静さ、私の為に使うてくれへんかな」

「私は冷静だよ。凄く」

「………さいですか」

 即答された声の冷たさが、静かにはやての全身に染み渡る。

「なのは、ごめん。仕事が一個増えたから先に寝てて」

「って!なのはちゃんマジでフェイトちゃん止めてや!!」

 このままでは本気で朝日が見られなくなりそうで。

 涙目でなのはに、はやては助けを求めた。

「はやてちゃん」

 そんなはやてに、にっこりとなのはは笑う。

「専用ってのはね、特定の人しかそれを行う事を許されていないっ

て意味なんだよ」

「っ!?」

「反省してね」

 綺麗な笑顔で言われたはやては、深く項垂れて、胸の前で十字を

切る。

 完全に抵抗を諦めたはやてが急に重くなり、フェイトは問う。

「なのは、何の話?」

「ん?私がフェイトちゃんだけを愛してるってお話」

 途端、ぽむと音を立てて、フェイトの頬が真っ赤に染まった。

 困ったように視線が宙を這い、やがてぽつんと想いが返される。

「あ、え、と。私も…好き、だよ」

「ありがとう。フェイトちゃん」

「……何?私、こんなん聞かされた上にしばかれるんか?」

「あ、ごめん。はやての事、一瞬忘れてた」

「そのまま一生忘れててくれてもええよ」

「そういう訳にもいかないよ。行こうか」

「もう、どうにでもしてや」

 すっかりやさぐれたはやては、引っ張るフェイトに従う。

「じゃあ、ちょっと行ってくるね」 

「程ほどにね」

「努力する」

 そう言って、はやてを連れてフェイトは部屋を後にする。

 ようやく静寂が戻り、時刻を確認するともう今日になっていた。

「あ、はやてちゃんに提出しなきゃいけない報告書があったっけ」

 それ程、急ぎではないけれど。

 はやての承認が必要な書類がデスクの引き出しに眠っている。

「朝……会えるかなぁ」

 のほほんと呟いたなのはの前では、飲み主を失ったキャラメルミ

ルクがまだ湯気を上らせていた。


白い悪魔を怒らすともれなく金色の死神が狩りに来ます。
なのフェイなんだかフェイなのなんだか、矛盾SS。

リリカルなのは はやての苦労に一本追加

日曜日, 1月 18th, 2009

リリカルなのはのはやての苦労にSSを一本追加しました。

『疑問-なのは-』

です。
疑問-フェイト-のなのはVer.です。はやてさん相変わらず命がけ(爆)

疑問-なのは-

日曜日, 1月 18th, 2009

 新設された機動六課に正式な出向命令が出た数日後。

 フェイトより遅れる事、二日。

 宿舎の自室になる部屋の下見になのはがやって来た。

「ついに来よったか」

 なのはの到着に、はやては静かに気合いを入れる。

 ここでドジを踏めば、後々面倒な事になりかねない。

 下手すれば己の命が今日、消える。

 任務で出払っている守護騎士達に私を護ってとはやては祈った。

「って、何で親友相手にこないな思いせなあかんねん」

 阿呆らしいと、はやては息をついた。

 それでも、気が緩められないのは、仕組んだ策のせいか、相手が

白い悪魔だからか。

 何れにせよ、後戻り出来ない以上、ここで決めなければならない。

「よし!」

 気合いを入れて、はやては、なのはとフェイトの部屋の扉を開けた。

「ここがなのはちゃんとフェイトちゃんの部屋やで」

「ありがとう。はやてちゃん」

 部屋全体を見回すなのはを、数歩後ろではやては観察する。

「綺麗な部屋だね」

「せやろ。リィンがよぉ頑張ってくれたからなぁ」

「リィンちゃんにもお礼言わなきゃ、だね」

「そうしたって。リィンも喜ぶわ」

 部屋の中へと足を進めたなのはは、広がるリビングルームや、整っ

たキッチンを確認していく。

 それを何も言わずに、はやては見つめる。

 そして、遂に寝室へと続く扉になのはは、手を掛けた。

 扉が開いた瞬間、はやてが息を飲む。

「……はやてちゃん」

「何かな。なのはちゃん」

「宿舎は私とフェイトちゃんで相部屋だって言ってたよね?」

「うん。伝えたな」

「この部屋をフェイトちゃんと二人で使うんだよね?」

「せや。だからこうして案内しとるんよ」

「部屋はとても良い部屋だと思うよ」

「ありがとう」

「でもね。はやてちゃん」

「何かな。なのはちゃん」

「何でベッドが一つなのかな。それもキングサイズの」

「奥手の親友のために、私からのささやかなプレゼント。かな」

「はやてちゃんっ!」

 不意に、はやては胸ぐらを捕まれた。

「無理だよ!フェイトちゃんと一緒に寝るなんて絶対に無理!!」

「わぉ。思った通りの反応をありがとう」

 予想通りだと、満足げにはやては親指を立てる。

「解ってるならこんな事しないでよっ!!」

「ええやん。今までだってフェイトちゃんと寝る事あったやろ」

「…それ、小学校の頃の話だよ」

「中学校の頃は?」

「お泊まりはしてたけど……お布団は別々にしてもらってた……」

「してもらってた。か」

 聞いた通りだとはやては思う。

 今のなのはの状態と、先に聞いているフェイトの話を照合すると、

フェイトは同じ布団で寝ようとしていたのだろう。

 小学校の頃からの延長で。

 だけど、なのはが頼むから別々の布団で寝ていた。

「まぁ、あの様子じゃほんまに何も気づいとらんやろしなぁ」

「……あえて言わないでよ」

 何か思う所があるのだろう。

 はやての胸ぐらを掴んだまま、なのはは項垂れる。

「こうなると、あの絶対的な信頼も考えもんやねぇ」

 なのはに不変と言っても過言ではない信頼をフェイトは置いてい

る。

 例え、世界中がなのはの敵になったとしても、フェイトだけは傍

から離れない。

 第三者であるはやてでもそう言い切れる程、なのはは特別な存在

で、純粋な思いで慕っている。

 それ故になのはの恋心には気づかない。

 その上、少々鈍い所もあるから余計に厄介で。

 出会いから十年経った今でも親友のままでいるのは、なのはだけ

のせいとは言えなかった。

「そんな状態で、はやてちゃんは私に何を期待してる訳?」

「んー。新しい人生への第一歩?」

「無理っ!」

 頭がクラクラしそうな位に首を横に振り続けるなのはに、とぼけ

た顔ではやては言う。

「そないな事言われてもなぁ。もう決まった事やし、諦めてや」

「他に部屋は空いてないの!?」

「空いてない」

 空いてるけれど空いてない。

 清々しいまでにすっぱりとはやては嘘をついた。

「じゃあせめてベッドは別々でっ!」

「何や。なのはちゃん、私からのプレゼントを無下にする気なんか?」

「え?」

「言うたやろ。私からのささやかなプレゼントやって」

「言ってたけど…」

 確かにプレゼントだと、はやては言った。

 だけど、それは単なる揶揄の一部だとなのはは考えていた。

 しかし、今のはやての口調からすると、それは勘違いだと言って

るように受け取れる。

「え、と。それは経費じゃないって事……?」

「当たり前や。局があんなん買うお金出してくれる訳ないやんか」

「じゃあ……あのベッドって……」

「私の自腹」

「そんなプレゼント……いらないよぉ」

 言って、胸を張るはやてとは対照的に、なのはの膝は崩れ落ちた。

 床に両手を突いて、項垂れるなのはに腕を組んではやては言う。

「ほんまの話。ええ加減、告白してもええとちゃうの?」

「………そんな簡単にはいかないよ」

 もそもそとなのはは膝を抱えた。

 立っているはやてからは表情が見えない。

 けれど、声で少し落ち込んでるのが解る。

「なのはちゃんが動かへんと何も変わらへんよ」

「それは、私もそう思うけど……」

 はやての言う事は理解できる。

 全くなのはの想いに気づいていないフェイトと仲を進展させるの

は、はっきりと告白する以外に手はない。

「でも、私が動いても解決するとは限らないし」

「万が一の事もあると?」

「ない。とは言い切れないかな……って」

 告白をしなければ先には進まないけれど。

 後退する事もない。

 親友のままで、傍にいられる。

「今はまだこのままでいいよ」

 戦闘スタイルとは真逆のなのはに、はやては溜め息を零す。

「不屈のエースオブエースはどこに行ったん?」

「フェイトちゃん相手の時は卑屈のエースオブエースだもん」

「……一文字違うだけでえらい意味が変わるもんやね」

 言い得て妙だと、はやては感心した。

「それにもし私が告白して、振られたとしたら……はやてちゃんは

困るでしょ?」

「そら、まぁ。ほんまにそうなったら困る気はするけど」

 なのはもフェイトもプライベートの感情を仕事に持ち込むタイプ

ではないが、重大な出来事があれば、どうしても凝りは残るだろう。

「あらへんやろ。それは」

 少なくとも先日のフェイトの印象では断るとは思えない。

 まだ自身の情に戸惑っている最中だから、吃驚はするだろうけれど。

 拒絶だけは絶対に有り得ない。

「そんなのフェイトちゃんにしか解らないよ」

 言って、膝を抱き締めるなのはに、後ろ髪をはやては掻く。

 話せば話すほど。

 突っつけば突っつくほど、なのはは小さくなってしまい、卑屈の

エースオブエースの珍名がしっくりくる姿になる。

 どんな相手でも全力全開でぶつかるなのはが、思い詰めて立ち止

まるのはフェイトの事を想う時だけで。

 その度に本当に好きなんだ、とはやては思う。

 同時に、埒が開かない、とも思う。

 小学校の頃によく聞いたフェイトへの『好き』という単語をなの

はから聞かなくなって何年経つだろう。

 らしくない思い詰めた表情もそろそろ見てるだけで辛い。

 脈がない相手ならともかく、脈しかない相手に躊躇っているなの

はは歯痒い。

 先日のフェイトの事を話したら、少しはやる気になってくれるか

もしれないが、勝手にフェイトの気持ちを代弁する事になってしまう。

 想いは自らの意志で伝えなければ、意味がない。

「……蹴飛ばしてみるか」

 今のなのはを見ている限りでは、放っておくと折角のチャンスも

フイにしてしまうだろう。

 ならば、少々乱暴でも動かざる得ない状況を作ってやるのも親友

としての優しさだ。

「そんなにフェイトちゃんと一緒は嫌か?」

「嫌って訳じゃないけど……困る、かな」

「そうか。ほな、部屋替えしよか」

「え?」

 膝から顔を上げたなのはに、はやては言う。

「フェイトちゃんは私の部屋に引き取るわ」

「ちょっ!何でそうなるの!?」

 焦って立ち上がるなのはにはやては続ける。

「せやかて、フェイトちゃんと一緒の部屋だとなのはちゃんは困る

んやろ?」

「一緒のベッドが困るってだけで一緒の部屋は困らないよっ!」

「同じやん」

「違うよっ!」

「ほな、どないするん?」

 問われて、なのはは言葉に詰まった。

「あっちはええ、こっちは駄目。なんて事が滅多にまかり通らんの

は、なのはちゃんかて解ってるやろ?」

「それは……」

 なのは達が勤める時空管理局は、日本で言えば警察と裁判所が一

緒になったような機関だ。

 理不尽な事も多ければ、憤りを感じる事も多い。

 むしろその連続だと言っても良いくらいだ。

 その機関に幼い頃から魔導士として、なのはは出入りしてきた。

 あの頃はまだ理解出来なかった大人の事情も、知らず知らずのう

ちに理解出来るようになっている。

「でも、それとこれとは……」

「同じやって。自分の都合ばかりが通らんって意味ではな」

 そう言うと、なのはは立ち尽くしてしまった。

 言い方が厳しかったか、とはやては思う。

 しかし、ここで手を抜いてしまえば、なのははまた後ろに突っ走っ

てしまうに違いない。

 人の恋路に口を挟むのはお節介だと解っているけれど。

 そこから続く未来があるのだから、荒療治でも手を出す。

 あの時、なのはとフェイトがはやてに手を差し伸べてくれたように。

「なのはちゃんへの選択肢は二つ」

 言って、人差し指と中指をはやては立てる。

「フェイトちゃんと相部屋になるか、それとも私がフェイトちゃん

と相部屋になるのを許可するか。このどっちかや」

 はやての指を見つめたなのはがこくりと息を飲む。

 人差し指も中指も選べない選択は、なのはにとってはかなりの究

極の選択だろう。

 それでも、どちらかをはやては選択させる。

 決めかねて惑うなのはの答えを待っていると、不意に首を傾げら

れた。

「どないしたん?」

「ちょっと思ったんだけど。私がはやてちゃんと相部屋になるって

いう選択肢があっても良いんじゃないかな?」

 第三の選択肢に気づいたなのはに、心中ではやては舌打ちする。

 あえて抜いた選択肢は先にフェイトと約束させられたはやての命綱だ。

 もし、これをなのはが選べば、はやての最期は近い。

「あー、それはな。私も一応うら若い乙女やし」

「……それはどういう意味なのかな?」

「気ぃせんといて」

「もの凄く気になるんだけど」

「それに私はまだ死にたない」

「何で命まで掛かるのかな?」

「内緒」

 前門の白い悪魔、後門の金色の死神。

 満面の笑みを浮かべるてても心中は冷や汗でどっぷり濡れている。

 どうして縁起でもない二つ名を持つ人間ばかり親友なのか。

 叫びたい気持ちを堪えて、早口ではやては捲し立てる。

「私の事はええから!とっとと選んでっ!!」

「ど、どっちって言われても……」

 命がけの迫力に負けたなのはは惑う。

 唇を閉めて、二本の指を交互に見つめる。

 部屋が一緒なのは嬉しい。

 悩みに悩むなのはの頬に汗が伝う。

「なぁ、なのはちゃん」

「ふぇ?あ、な、何かな?」

 何時までも続く静寂にはやては痺れを切らした。

「私はそんなに信用が無いんか?」

「そ、そういう訳じゃないよ!」

「なら、そないに悩まんでもええやんか」

「それはそうなんだけど、ね」

 頬を掻いて、躊躇いがちになのはは言う。

「その、はやてちゃん…フェイトちゃんに何かしそうだなぁ…って」

「何や、親友を疑うんか?」

「疑ってないよっ!疑ってないけど……少し日頃の行いを省みてみ

ない、かな…?」

「安心しぃ」

 セクハラに近しいスキンシップを遠回しに指摘するなのはを安心

させるように、はやてを肩を叩く。

「フェイトちゃんの『身も心』も私が責任もつから」

「私とフェイトちゃんを同じ部屋でお願いします」

 反射の速度でなのはは答えた。

 してやったり、とはやてが笑みを浮かべる。

「言うたな?」

「あっ……」

 慌てて口を押さえるなのはの肩を叩きながら、はやては畳みかける。

「これで部屋割りの問題は解決や。やー、納得してくれてほんまに

助かったわ」

「ちょっ!今のははやてちゃんがっ!」

「あまり我が儘言うと、部隊長命令にするで」

「なっ!?」

 命令に逆らう事ができないのが、悲しい局勤め。

 例え嵌められたとしても上司命令は絶対だ。

 それでもと、なのはは叫ぶ。

「それ、職権乱用だよ!」

「職権乱用上等っ!公私混同大歓迎っ!!」

 なのはのせめてもの抵抗は軽くいなされ、逆に追い打ちをはやて

は駆ける。

「私の決定に意義がありますか?高町教導官」

 とても爽やかな笑顔が、なのはを完全に黙らせた。

 その呼び名で問われたら、最後。

 余程の事でない限りなのはに抵抗する術はない。

「……ないです。八神部隊長……」

「決まりやね。なのはちゃん」

「……卑怯だよ。はやてちゃん」

「人聞き悪い。戦略的勝利と言うてや」

 無事に撃墜できたなのはに、命の蝋燭が伸びたはやては安堵する。

 命令という単語を繰り出すのは、はやて自身、卑怯だと思わなく

もないけれど。

 こうでもしなければ、夢の部隊が起動する前に自身が起動不能に

なる状況に陥るのは目に見えていて。

「ほな、部屋の鍵を渡しておくな」

 なのはが復活しないうちに話を進める。

「うー…」

 カードキーを手にしたなのはは、やはり納得できない部分がある

らしく、ベッドを窺っては溜め息を吐く動作を繰り返している。

「最後の悪足掻きやねぇ」

「あのね」

 睨むなのはを、まぁまぁと宥め、はやては聞く。

「見ての通り部屋は準備出来とるけど、引っ越しの予定は立っとる?」

「…………着任ギリギリの予定」

「それ、今決めたやろ」

「誰のせいか解ってるよね?」

 早めに来る予定だったのに、と呟くなのはからは戦闘時の潔さは

全く感じられなくて。

 これはこれで面白いなぁ、とはやては思う。

「ま、任務に支障がなければ何時でも構わんよ。じっくり心の準備

しとき」

「はやてちゃん!」

 赤い顔の抗議を頬笑みで受け流し、はやては踵を返す。

「ほぇ?はやてちゃん、どこ行くの?」

「お仕事。これでもまだ細かい調整があるんよ」

「あ、ごめんね。仕事中なのに案内させちゃって」

「ええよ。これも部隊長としての仕事の一環やしな」

 軽く手を振って、はやては部屋の入り口へと向かう。

「なのはちゃんはゆっくりしてってな。色々と考える事もあるやろし」

「だからそれはっ!」

「ほな、またなー」

 笑いながら部屋を後にするはやての耳に届いた大きな溜め息は、

きっと気のせいではないだろう。

 恐らくまだ、あー、だの、うー、だの唸っているに違いない。

 そして、なのはとの会話をはやては思い出す。 

『ほんまの話。ええ加減、告白してもええとちゃうの?』

『………そんな簡単にはいかないよ』

「むちゃ簡単やって」

 何をそんなに悩む事があるのだろうか。

 フェイトの瞳には、昔からなのはしか映っていないというのに。

 それは10年経った今でも何ら変わらなくて。

 当人がどうして気づかないのかが不思議だ。

 その瞳に慣れてしまったせいなのか。

 お互いが近すぎるからなのか。

 何れにせよ、きっかけになる環境は作った。

 背中を蹴って応援もした。

 残すは、願うだけ。

 最初の一歩を本人達が自らの足で進んでくれる事を。

 何時か訪れる吉報を心待ちにして、はやては仕事に戻った。


卑屈のエースオブエースの一言が使いたくて出来たSSなんて言えない(爆)

逮捕しちゃうぞ 夏実×美幸にSS追加

月曜日, 1月 12th, 2009

逮捕しちゃうぞの夏実×美幸に1本SSを追加しましたー。
『未満 (夏実→美幸)』
だす。
夏実×美幸に突っ込んでるけど片想い話です。
カテゴリー作った方がいいかな…?

未満 夏実→美幸

月曜日, 1月 12th, 2009

「さて。どうしますかねー」

 呟いて、夏実は頭の後ろで手を組んだ。

 突然、体重を預けられた椅子がギシリと悲鳴を上げる。

 警察内部の支給は応接室でもない限り、決して上等な椅子とは言

えない。

 一般的に多く使用されているであろう事務用の椅子で、背を支え

る支柱も弱いとは言えないけれど、強いとも言えない代物だ。

 それでも、夏実はゆらゆらと体を揺らした。

 お構いなしの夏実の体重に椅子がギシギシと音を立てる。

 今の夏実は椅子の心配をするような余裕は無かった。

 頭の中では同じ考えが絶え間なく回っている。

 右回りで駄目なら左回りで。

 それが駄目なら壁を壊して直線の道を造る。

 ちょっと乱暴な方法を含めて思考の迷路から抜け出そうとしても、

流石にそれはまずいかと理性が思いとどまらせた。

 どれだけ考えても振り出しに戻るそれは同じコースを周回するGP

レースに近い。

 違いはGPレースよりもコースが複雑で。

 必ずしもゴールに辿り着けるとは限らない事だった。

 思考は夏実に苛立ちを募らせて。

「あーー!もうっ!!」

 パンクしそうな頭に夏実は叫んだ。

 同時に、交通課の面々が驚いて体を震わせる。

「あ…」

 交通課全ての視線を一身に浴びた夏実は我に返った。

 視線の集中砲火の真ん中で、どうにも良い言い訳が思い浮かばず

苦笑いで応える。

 この状況をどう切り抜けるかと焦る夏実に溜め息混じりの課長の

声が飛ぶ。

「辻本ー。コーヒーでも飲んでこいー」

「はい。すみません!」

 寝呆けたと思われたのだろう。

 普段なら本当に寝ていても寝ていないと主張する所だが、今回だ

けは幸いだ。

 日頃の自分に感謝して、夏実は素直に席を立った。

 交通課を後にして、廊下奥の自販機を目指す。

「らしくない事してるから疲れてるのかな」

 歩きながら拳を作り、自分の頭を軽く小突く。

 考えるよりもまず行動が信条の自分を理解している分、今の状況

が性格に沿っていないのは自身が一番理解していた。

 とはいえ、現状打破するにはそれなりの勇気と覚悟がいる。

 少なくとも相棒の名を返上する位の気持ちが必要だ。

 考えている間も歩みだけはとりあえず進み、気づくと自販機の前

に夏実は着いていた。

「とりあえずコーヒー飲も……」

 疲れた頭を一先ず置いて、自販機に夏実は小銭を投入する。

 コールドのブラックを選択し、ボタンを押すと鈍い音が響く。

「ありゃ?」

 取り出し口から缶を取った夏実は目を瞬かせた。

 コーヒーのボタンを押した筈なのに、出てきたのはストレートティー。

「業者の人、入れ間違えたな」

 自販機に補充に来る業者はうっかり屋さんなのか、希に表示と異

なる飲料が出て来る事がある。

「紅茶も良いけどコーヒーの気分なんだよなぁ」

 手元の缶と自販機に照らされる見本のブラックを見比べて悩んだ

あげく、夏実は微糖のコーヒーをもう一本買った。

 右手にコーヒー、左手にはストレートティー。 

 両手を缶で塞いだ夏実は最寄りのソファーに腰掛けた。

 交通課の事務用の椅子よりも一般に開放されたソファーは座り心

地が良い。

 奥までしっかりと座り、コーヒーのプルタブを開ける。

 家で飲むコーヒーより味は薄い。

 でも、飲みたかったコーヒーに気持ちは満たされて。

「こっちは美幸にあげるか」

 紅茶を好む相棒の名がついと口をつく。

 そして、その名をきっかけに隅に追いやられていた思考が戻って来る。

 良い気分が少し害されて、夏実は頭を掻いた。

 今、夏実を悩ます源は相棒である美幸本人だ。

 といっても、喧嘩をした訳ではない。

 美幸に全く不満が無い。という訳ではないが、真剣に悩むほど何

かがあるという訳じゃない。

 時折、意見が食い違う事はあるが、それも信頼の上での意見交換だ。

 言いたい事が言える良い関係だと言えるだろう。

 今の悩みの種は、単純かつ複雑な情の問題。

 夏実の中での美幸という存在の大きさが、頭を悩ませる。

 ただの相棒のままならば、こんなに考える事もなかったのだろう

けれど。

 そこに異なる情が重なると少々厄介になってくる。

「どうしたものかねー…」

 缶を咥えたまま夏実は独りごちた。

 一般的に異性に向ける筈の想いが美幸へ向いていると気づいたの

は何時のことだろうか。

 もうはっきりと思い出せない。

 ただ、やばいなぁと感じたのは、科捜研の研修で暫くアメリカに

行くと聞いた時だった気がする。

 他人の行動を縛る質ではないのに、やけに寂しくて。

 二度と会えない訳でもないのに、引き留めたくなった自身に自分

で驚いたものだ。

 それから、無事に美幸は研修から戻って来て。

 帰国早々のカーチェイスに付き合って。

 美幸を再認識した時は、本当に嬉しかった。

 そして。

「気づいてしまった。と」

 自己分析を終了させた夏実は腕を組んで頷く。

「だから困ってるとも言えるけどねぇ」

 気づかなければ、相棒のままでいられたのに。

 気づいてしまったら、相棒だけじゃ物足りない。

 もう何度目の堂々巡りだろう。

 頭から湯気が出るほど考えても、自己分析を繰り返しても、行き

着く先は同じで、他のゴールは浮かばなかった。

 それでも、同じ場所に踏み止まっているのは美幸を困らせたくな

い一心に他ならない。

「でも。ここらが限界かな」

 コーヒーの缶をゆらりと夏実は回す。

 我慢はじりじりと、痺れが切れ始めている。

 ずっと悩んでいた脳が考えるのを拒否しつつある。

 そうなると、残るのは行動だけ。

 遅かれ速かれ、この情を伝えてしまうだろう。

 それは美幸にとって良い事だとは思えないけれど。

 このままではいられない。

「やっぱ相棒失格になるかなぁ」

 ふぅと息を吐いて、夏実は天を仰ぐ。

 コンビ解消になり得るかもしれない告白は、今の関係を考えれば

言ってはいけない一言。

 だけど、何時だって美幸と二人でギリギリのラインを駆け抜けてきた。

 今回も、一か八かに掛けてみたいと夏実は思う。

「……うん」

 頷いて、残ったコーヒーを夏実は飲み干した。

 拳を握るように力を込めると缶が凹む。

「よし!」

 気合いを入れて夏実が投げた缶は宙に弧を描いて。

 一直線にゴミ箱にストライクした。


珍しく悶々とする夏実(^^;
どっちかと率直に言っちゃう人だけど、気遣いも出来る人なのでこんな感じにしてみました。つか、なった(爆)
ま、美幸が絡むと普段よりも数倍色々と考えそうだし。って事で。

リリカルなのは フェイト×なのは追加

日曜日, 1月 11th, 2009

リリカルなのはのフェイト×なのはに。
『休暇(フェイトVSシャーリー)』
を追加しました。
シャーリーさんがフェイトさんで遊んでます(笑)

休暇(フェイトVSシャーリー)

日曜日, 1月 11th, 2009

 時空航行の任務は長期に渡る事が多い。

 一度、任務に着くと一、二週間、家に帰れない事は当たり前で、

長期任務になると一ヶ月以上帰れないのが常だ。

 その代わり、任務後の休暇は局勤めの局員よりも長めに設定され

ている。

 緊急要請がなければ、三日~一週間。

 長期任務後ならそれ以上の休暇が与えられる。

 長期勤務の長期休暇。

 地球で言えば、国から国へ渡る大型船の船乗りと同じようなシフ

ト編成だ。

 時空航行部隊の執務官であるフェイトと、その補佐であるシャー

リーも例に漏れなかった。

「ようやく帰れるかな」

 艦隊内の執務室で、今回の任務の報告書を纏め終わったフェイト

は、一息ついた。

 それを見計らったようにシャーリーはコーヒーをフェイトのデス

クに置く。

「お疲れ様です。フェイトさん」

 ありがとう、と言って、フェイトはコーヒーを一口飲む。

 シャーリーの淹れるコーヒーは美味しかった。

 長い付き合いのお陰かフェイトの好みが熟知しており、飲むと一

心地着く優しさを感じられる。

 フェイトがこの世で二番目に好きな味だ。

「シャーリーこそ、お疲れ様」

「いえいえ。フェイトさんに比べれば、私なんてまだまだ楽ですよ」

「私はシャーリーがいてくれてとても助かってるよ」

 謙遜するシャーリーにフェイトは肩を竦める。

 得てして、バックアップとは、される側よりもする側の方が遥か

に大変な物で。

 重要面は若干劣るかもしれないけれど、仕事量は同等、もしくは

それ以上の筈だとフェイトは思っている。

「いつも助かってる。ありがとう」

 素直に礼を述べると、シャーリーの頬に微かに赤みが差す。

「私もフェイトさんの下で働けて嬉しいんですからお互い様ですよ」

 言って、照れ笑いをするシャーリーに、フェイトも微笑を浮かべた。

 報告書も書き終えたフェイトの残す仕事は本局へ書類の提出のみ。

 それが終われば久しぶりに家に帰れる。

 だから、何となく。

 世間話の一環くらいの軽い気持ちで、シャーリーにフェイトは聞いた。

「シャーリーは普段、どんな風に休暇を過ごしてるの?」

「私ですか?」

 自身を指差すシャーリーにフェイトは頷く。

「そうですねぇ。読書したり、テレビを見たり、友達と出かけたり…。

ま、一般的に普通と言われる過ごした方ですかね」

「そっか」

「フェイトさんはどんな事をしてるんですか?」

「私は……そうだなぁ」

 問われて、日頃の自分をフェイトは思い出す。

「任務の資料を見直したり、なのはとお喋りしたり、ヴィヴィオと

遊んだり、なのはとヴィヴィオに御飯やお菓子を作ったり。なのは

がお休みの時はヴィヴィオと三人でお買い物に出掛けたり。そんな

感じかな」

 至って平然と言うと、シャーリーが苦笑いを浮かべた。

「……仕事以外は、なのはさんとヴィヴィオちゃんばかりですね……」

「時々、はやても加わるよ」

「いえ、そういう事じゃなくてですね」

 溜め息をつくシャーレーにフェイトは小首を傾げる。

 何かおかしな事を言っただろうか。

 思い返しても、おかしな点が解らないフェイトに、シャーリーは言う。

「本当にパパさんだなぁと思っただけです」

「パっ―――!」

 とんでもないシャーリーの発言にフェイトの顔が赤く染まる。

「わ、私はヴィヴィオのママだよ!?一応女だし!!」

「突っ込みはそこなんですか?」

 慌てふためいてずれた返答をするフェイトに、じゃあと、シャーリー

は追撃を繰り出す。

「なのはさんの旦那さん。はどうでしょう?」

「だっ―――っ!!」

 立て続けに繰り出された爆弾発言は、完璧にフェイトを撃墜した。

 返す言葉が見つからないフェイトはデスクに突っ伏す。

 顔が熱い。

 冷たいデスクが火照った頬を冷まし、冷静さをフェイトは取り戻す。

 父親をしているつもりはなかった。

 ただ、なのはとヴィヴィオが可愛いから、家にいる時くらいは二

人と一緒に過ごすようにしていただけで、そんな意識は全くなかった。

 しかし、よくよく考えてみれば一般的な父親像に当て嵌まる行動

が多い気がしなくもない。

 少し自重しようとフェイトは思う。

「って、そうじゃなくてっ!」

 勢いよくデスクから起きてフェイトは言った。

「あ、あのねシャーリー。私となのはは、その、そういう関係って

訳じゃ……」

「フェイトさん、今回の任務の前に二階建てのお家を購入されたん

ですよね?」

「え?う、うん」

 話を途中で遮られたフェイトは瞳を瞬かせながら頷く。

「陸での帰る家が欲しかったから。ちょっと贅沢かなと思ったけど」

「その家になのはさんとヴィヴィオちゃんも住んでらっしゃるんで

すよね?」

「私はそんなにいられないけど、なのはとヴィヴィオがいてくれれ

ば色々と安心だし」

「お帰りってお出迎えされるのって、嬉しいですよねー」

「それは、嬉しいね」

 なのはとヴィヴィオの顔を思い浮かべたフェイトの頬が自然と綻ぶ。

「ご家庭用のファミリーカーも購入しようとか考えているとお聞き

しましたけど?」

「う、うん。局の車だとやっぱり狭いし。ヴィヴィオもまだ小さい

から遠出する時や買い物の事を考えるとあっても良いかなって……」

「ところで。二階の一部屋を空き部屋にしてるのって、やっぱりヴィ

ヴィオちゃんが大きくなった時の事を考えてですか?」

「…………それ、誰に聞いたの?」

「八神二等陸佐です」

「はやてー……」

 とても楽しそうに、内部事情を話す親友が易々と想像できたフェ

イトは頭を抱える。

「あ、そういえば先ほどフェイトさんも何か言いかけませんでした?」

「…うん。なんか、もぅ、いいや」

 わざとなのか、本気なのか。

 どちらにせよ、長い間一緒に仕事をしてきて、機動六課の頃どこ

ろか、その前から自身となのはを知っているシャーリーには何を言っ

ても無駄な気がフェイトはした。

 言われた事も実に本当のことばかりだ。

 デスクに頬杖を突くようにして、フェイトは顔を隠す。

 別になのはとの関係を隠すつもりはフェイトにはなかった。

 そんな拙い覚悟で、なのはと一緒にいない。

 それは、なのはも同じ気持ちだと解っている。

 二人で話し合って、決めた事だから付き合ってるか問われれば、

そうだと答えるつもりでいた。

 しかし、『パパ』と『旦那さん』は予想を遥かに超えていて。

 強い衝撃を受けた心に、熱がまた頬に舞い戻る。

 鼓動も速い。

 そっと、フェイトは胸を押さえた。

 呼吸が苦しい。

「…パパ…」

 囁くような声でフェイトは呟いた。

 くすぐったい気がする。

 性別的に有り得ない呼び方だけど、それも良いかなと感じる。

 でも、やっぱり少し照れると思う。

「……だん……」

 続いて言ってみようと思った言葉をフェイトは口に出来なかった。

 これは、照れるなんてレベルじゃない。

 恥ずかしいなんて度合いでもなかった。

 強いて言うなら、穴があったら入りたい。

 自ら掘ってでも隠れたい。

 そんな思いに激しく駆られ、フェイトは再びデスクに突っ伏した。

 一人身悶えて、撃沈するフェイトを眺めていたシャーリーは呟く。

「まずかったかな?」

 照れ屋さんなのは重々承知の上での発言だったけれど。

 ここまで反応されるとは思わなかった。

 と、いうより未だに、この初心な反応が出来る純粋さは、ある意

味尊敬に値するとシャーリーは思う。

「フェイトさん、大丈夫ですか?」

 そっと、声を掛けると我に返ったようにフェイトは顔を上げた。

「う、うん。大丈夫。大丈夫だけど…」

 口元を手で隠して、視線を合わせないままフェイトは言う。

「その呼び方は…ちょっと、遠慮してもらえるかな…」

「あ、はい。解りました」

 半涙目でお願いすると、素直に快諾された。

「ちなみに。どちらを遠慮すれば良いのでしょう?」

「……両方。無理なら後者は、本当に止めて」

 破壊力があり過ぎる。

 仕事どころか私生活でも支障が出そうだとフェイトは懇願した。

「あぁ、なるほど。そっちの方がアレなんですね。解りました」

 何を理解してくれたのか気になりつつも聞くのが怖くて、宜しく

とだけフェイトは言う。

 その時、艦内放送で、あと10分で着港するという連絡が入った。

「じゃあ、報告書は私が出しとくから。シャーリーは休暇に入るっ

て事で、良いかな?」

「はい。ありがとうございます」

 敬礼するシャーリーに、ほぅと一息ついてフェイトは書類を纏めた。

 鞄に書類を仕舞い、デスクの中から必要になりそうな私物を詰め

て、乗降の準備をする。

「あ、と。これも忘れないようにしないと」

 言って、フェイトはデスクの上に飾っている写真立てを取った。

 仕舞う前にもう一度と、フェイトが見つめる

 もう直ぐ写真ではなく、本物に会える嬉しさでフェイトの頬を綻ぶ。

「フェイトさん、フェイトさん」

 シャーリーに呼ばれて、フェイトは自分の世界から帰ってきた。

「え…。あ、何かな?」

「先刻から通信が呼んでますけど」

「え?」

 見ると、傍でコンソールが開いており、通信の文字を赤く照らし

ている。

「ご、ごめん。気づかなかった」

 慌てて、コンソールを操作し、フェイトは通信をクリアにした。

『フェイトちゃーん』

『ふぇいとままー』

 途端、飛び出たのは、聞きたくてたまらなかった二つの声。

「なのは、ヴィヴィオ」

 画面の中の大好きな二人の顔に、フェイトは破顔した。

「急にどうしたの?」

『フェイトちゃん、今日帰って来るんだよね?』

「うん。もう港に着くよ」

 艦内放送から計算すると、あと3分くらいで港に着く筈だ。

『帰りは何時くらいになる?』

「本局に報告書を提出するだけだから。夕方には帰れるかな」

『じゃあ、本局まで迎えに行っても良い?』

「いいの?なのは、仕事は?」

『内勤だったからもう終わってるよ。今日帰って来るって言ってた

から頑張ったもん。ねー、ヴィヴィオ』

『ねー』

 顔を見合わせて微笑み合う、なのはとヴィヴィオを楽しそうにフェ

イトは見つめる。

「じゃあ、お願いしようかな」

『うん。待ってるね』

『ヴィヴィオもーいっしょにまってるー』

「うん。なのはママと一緒にお利口にして待っててね」

『うん。おりこうにしてまってるー』

 可愛い笑顔と返事に頷くと、着港したと艦内放送が流れた。

「あ、着いたみたい」

『そっか。じゃあ、フェイトちゃん後でね』

『ふぇいとままあとでー』

「うん。後でね。なのは、ヴィヴィオ」

 言って、フェイトは通信を切る。

「シャーリー待たせちゃってごめんね。行こうか」

「はい」

 鞄を持ってフェイトとシャーリーは忘れ物がないか確認して、執

務室を後にした。

 廊下を歩くフェイトは明らかに上機嫌で、横を歩くシャーリーまで

嬉しくなる。

「フェイトさん、嬉しそうですね」

「そりゃあ、ね。ようやく帰って来れたから」

 照れ臭そうにフェイトは言った。

「ヴィヴィオちゃん相変わらず可愛かったですねー」

「そうだね。前よりちょっと背も伸びた気もしたよ」

「でも、いいですよねー」

「え?」

 羨ましそうなシャーリーにフェイトは首を傾ぐ。

「可愛い奥さんと娘さんのお迎えなんて」

「ぶっ!」

 思わずフェイトは転けそうになった。

「シャ、シャーリーっ!」

「あ、すみません。つい」

 頬を掻きながら謝るシャーリーから隠すようにフェイトは手で顔を覆う。

「私、パパでもなければ、なのはのだ……だ、んな、さ、ん……で

もないから」

「はい。以後気をつけます」

 にっこり微笑むシャーリー本当に解ってるのか疑問にフェイトは思う。

 それでも、この話題を続けるのは心臓に悪過ぎて。

 フェイトはそれ以上、言うのを止めた。

 黙って、廊下を歩くことに専念する。

 その数歩を後ろをシャーリーは連いて行く。

 耳まで真っ赤にして、何時もより歩調が速いフェイトを見ながら

シャーリーは思い出す。

 家族を一番に考えた住居の購入。

 先刻のコンソールでの会話。

 そして、任務時に必ずデスクに飾られる写真。

 なのはとヴィヴィオが写っている写真は、任務が終わる度に新調

されている。

「どう見ても立派にパパで旦那さんですよ。フェイトさん」

 懲りないシャーリーの呟きは、幸いな事に早足のフェイトの耳に届か

なかった。


おいらの中でフェイトさんは、パパで旦那さんのイメージが・・・。←多分同人誌の影響。
でも、アレやらソレはなのはさんの方が積極的(爆)
・・・・・・偏ったイメージですみません。

リリカルなのは はやてさんは苦労性を開設

水曜日, 1月 7th, 2009

リリカルなのはの、子カテゴリーに「はやてさんは苦労性」を開設しましたー。
内容はタイトル通り。
なのはさんとフェイトちゃん(なのフェイかフェイなの前提の意味)に振り回されるはやてさんのお話です。
ものっそい涙を誘うカテゴリー名。
ほぼ100%ギャグ仕様になる事間違いなしです。
とりあえず1本「疑問ーフェイトー」を突っ込みました。
興味がある方はだうぞm(__)m

疑問-フェイト-

水曜日, 1月 7th, 2009

 新設された機動六課に正式な出向命令が出た数日後。

 はやてに案内されて、フェイトは宿舎の部屋の下見に来た。

「良い部屋だね」

「せやろ。期待しとる隊長さん達のためやからね。頑張って造らし

て貰ったわー」

 入り口で部屋を見回したフェイトの素直な感想にはやては満足気

に頷く。

「ありがとう。はやて」

「ええって。ささ、中も確認したって」

「うん」

 はやてに促されて、フェイトは部屋の中に歩む。

 途中でクローゼットの大きさやキッチンの設備を確認したフェイ

トは、部屋を区切る扉を開ける。

 そこは洗面所兼脱衣所となっていた。

 脱衣所の奧は磨りガラスの扉があり、浴室へ続いている。

「お風呂も付いてるんだ」

 ユニットバスではなく、ゆったりとお湯に浸かれるお風呂場をフェ

イトは嬉しそうに覗く。

「他の部屋は付いてへんけどな」

「そうなの?」

「あ、各部屋シャワーは浴びられるようにしてあるで。でも風呂桶

はこの部屋と私の部屋だけや」

「そうなんだ。でも、どうして?」

「宿舎自体に大風呂は造ってあるし。私らの世界以外はあまりお湯

に浸かる習慣があらへんみたいやしな」

「そっか」

 色々な世界の住人が住んでいるミッドではあるが、どうやら湯船

に浸かる習慣は、はやてやなのはが生まれ育った世界、しかも日本

に限定されているらしい。

「それに、なのはちゃんは特に部屋風呂が必要かと」

「私もお湯に浸かるの好きだよ?」

「あー、せやね。フェイトちゃんもお風呂好きやもんね」

「うん」

 フェイトも日本で暮らしているうちに湯船に浸かるのが気に入っ

たのははやても知っている。

 しかし、純粋にお風呂が好きなフェイトと、そこに困る理由があ

るなのはでは必要の意味が違う。

「お風呂はもうええやろ。次、行こか」

 その意味を知っているはやてはこれ以上突っ込まれる前にとフェ

イトを先に促す。

 浴室を後にしたフェイトはキッチンの設備、クローゼットの大き

さ等を丁寧に確認して行く。

 そして、寝室への扉を開けた。

 その様子を後ろからはやては静かに窺う。

「はやて」

「ん?」

「大きなベッドだね」

「せやろ」

「でも、私となのはで相部屋って言ってなかったかな?」

「言うたよ」

「ベッドが一つって事は、私となのはは一緒に寝るって事?」

「その為のキングサイズやと思って」

「そっか」

 今、フェイトがどんな表情をしているのかは、後ろ姿しか見えな

いはやてには窺い知れない。

 ただ、幾ばくか思う所があるらしく、何かを考えているような雰囲

気だ。

「なのはちゃんと一緒に寝るのは嫌か?」

「ううん。そんな事ないよ」

 言って、フェイトはベッドに腰掛けた。

 スプリングの効いたベッドが少しだけ沈む。

「なのはは、もうこの部屋を見たかな?」

「まだやけど。二、三日中は来る言うてたで」

「そっか」

 言って、またフェイトは考える。

 その表情は、躊躇っているような困惑しているようにも見える。

「フェイトちゃん、何か困る事でもあるんか?」 

「私はないけど」

「ないけど?」

「なのはは…嫌がるかな、と思って」

「何で?」

「うーん。中学生になった位の頃から、かな。お泊まりしてもなの

は、一緒に寝てくれなくなったから」

「あー……」

 なるほど、とはやては納得した。

 丁度それ位の頃に、なのはからフェイトの事で相談された覚えが

はやてにはある。

 相談の時期と一緒に寝なくなった時期が一緒という事は、つまり

そういう事で。

 好きな相手と平常心で一緒に寝られる程、なのはの精神は強くな

かったようだ。

「ちなみにフェイトちゃんはその理由を聞かへんかったの?」

「聞いたけど教えてくれなかった」

 素で、何でだろ?と言うフェイトに、はやてはなのはに同情した。

 こんな純粋な瞳で聞かれたら、言えるものも言えないだろう。

「にしても、これは時期尚早やったか…?」

 六課への出向はあくまで仕事がメインだ。

 けれど、なのはとフェイトには良い機会でもあると、はやては考

えていた。

 フェイトは海の執務官で、なのはは空の教導官だ。

 二人が毎日のように連絡を取ったり、休みが重なれば会っている

のも知ってはいるけれど。

 どうしても時間は限られる。

 だからこの機会を物にしろと、なのはとフェイトを同じ部屋にした。

 ついでに、自腹を切ってキングサイズのベッドまで用意してみた

が、どうにもなのはの想いがフェイトに伝わらなさ過ぎている。

 想定以上のフェイトの鈍さにはやては焦った。

 危険な任務が伴う管理局では、休息も仕事のうちだ。

 フェイトはともかく。

 なのはは任務に支障をきたしかねない可能性がある。

 一歩間違えれば最悪の事態になる事も有り得るだろう。

 計画を中止して、もう少し様子を見た方が良いかもしれない。

 暫らく考え込んだ末、はやては妥協案を口にした。

「しゃあない。なのはちゃんが嫌がったら私と相部屋になってもら

うかな」

「駄目っ!」

 フェイトの声にはやては目を瞬かせた。

「フェイトちゃん?」

「はやてとなのはが一緒の部屋なんて駄目だよ」

「何で?」

「だって、はやては、なのはに…その、変なことしそうだから」

「変なことって…何もせぇへんよ」

「でも、なのはが嫌がる事とかしそうだし」

「親友相手にそないな事せぇへんって」

「胸も触らない?」

「それは…………せぇへん、と思う」

「やっぱり駄目」

「ええやんかそれ位。アレやらソレやらするつもりはあらへんし」

「アレとかソレとかって。……はやて、なのはに何をする気だったの?」

「あ、こっちの話。気ぃせんといて」

 フェイトから視線をはやては逸らす。 

 つい無粋な事を口走ってしまったと口元を押さえてはやては反省

する。

「……もしも、だけど」

すると、低く唸るような声がはやての耳に届いた。

「なのはの嫌がる事をしたら」

「フェ、フェイトちゃん?」

「はやてが相手でも私は許さないよ」

 恐る恐る振り返ると、紅の瞳がはやてを一直線に射貫いていた。

 フェイトの魔力が高まり、手元に金色のデバイスが光る。

「ちょっ!」

 本能が恐怖に震えた。

 背中に戦慄が走って戦慄いたはやては早口で言う。

「せえへん!なのはちゃんが嫌がる事なんかせえへんってっ!って

いうか私となのはちゃんが同じ部屋になる事はあらへんからっ!!」

「本当に?」

「ほんまほんま。マジやから信じたって!」

「ならいいけど……」

 静かにフェイトの魔力が小さくなり、デバイスがジャケットのポ

ケットに仕舞われた。

 紅の瞳の光が和らぎ、落ち着きを取り戻す。

「ヤバイ地雷を踏むとこやった……」

 日頃、穏やかなフェイトが怒るのは大切な者を護る時だけ。

 その対象は家族であったり、被保護者であったりと様々ではある

けれど。

 なのはの時は他の誰とも異なる尋常ではない怒り方をする。

 率直に言えば、ブチキレる。

「ほんまになのはちゃんの事、大事なんやねぇ」

「大事だよ」

「…好きなん?」

「好きだよ」

「一番?」

「うん」

「……即答やね」

「本当の事だから」

 どうして、これで二人の関係が進まないのだろう。

 もういっその事、なのはの想いも全部ぶちまけたい衝動にはやて

は駆られた。

 しかし、それはやってはいけない事。

 二人で歩むのが恋愛だと、自分に言い聞かせてはやては堪える。

「はやて、他に部屋は空いてないの?」

「空いてへん事はあらへんけど。万が一、本局に応援を要請した時

とかの為に空けときたいんよ」

「じゃあ、私がはやてと一緒の部屋でもいいよ」

「あ、それは勘弁して」

「どうして?」

「申し出は嬉しいんやけどな。ちょーーっと命の心配があるという

か、お話をされそうな気がするというか。とにかく勘弁して」

「よく解らないけど…、都合が悪いのは解った」

 小首を傾げながら納得するフェイトに苦笑いをして、壁に額をは

やてを預けた。

「……何やねん。この前門の虎、後門の狼な展開は」

 ちょこっと親友の恋の手助けをするつもりが、何時の間にか自分

の命が掛かっている。

 今まで色々な任務を、はやてはこなしてきた。

 それこそ、命掛けだった事もある。

 なのに親友が相手の、たかだか部屋割りという単純な問題が、一

番命の危機になるのは何故だろう。

「とにかく何とか現状打破せんと」

 こんな小さな事で、親友に命を取られるのは御免被りたい。

 真剣にはやては思考を巡らす。

「せや!」

「ん?」

「なのはちゃんとヴィータで相部屋ならどや!?」

「ヴィータと?」

「そうや。隊長と隊員を同じ部屋にする訳にはあかんしな。せやけ

どヴィータなら副隊長やし私の守護騎士や。問題あらへんやろ?」

 脳裏に浮かんだ、もの凄く嫌がるヴィータに謝りながら、はやては

言った。

「これならフェイトちゃんも納得行くとちゃうん?」

「う、うん。……そうだね。ヴィータなら、なのはを守れる、よね」

 そう言うフェイトの表情は晴れない。

 納得していない訳ではないが、腑に落ちないといった表情だ。

「何や。他にまだ問題あるんか?」

「あ、そういう訳じゃないんだけど。何て言ったらいいのかな……」

 上手く言葉が見つからないのか、フェイトは小首を傾げたり、口

を開いたり閉じたりを繰り返す。

「フェイトちゃん。思った事をそのまま言うてみて」

「う、うん。その、ヴィータでも、なのはと一緒の部屋は…何か、嫌だな。

と思って」

 言って、慌ててフェイトは付け足す。

「ヴィータが嫌いとかそういうんじゃないよ!」

「解ってるって。ええから続けて」

「えっと、上手く言えないんだけど…。折角、なのはと一緒にいられる機

会なのに一緒にいられないは寂しいっていうか。私の我が儘だと解ってる

んだけど、やっぱりなのはと同じ部屋が良いかな…」

 たどたどしいフェイトの言葉を意外な気持ちではやては聞いた。

 フェイトがなのはを大切にしているのは、初めての友達で、初め

ての親友で、初めてフェイトの存在を、生きる意味を与えてくれた

存在というのが根底にある。

 だから、フェイトのなのはを護る為に傍にいる意味は、ある種の

恩返しに近いと思っていた。

 しかし、今のフェイトの言葉は違う。

 自分の意志でなのはの傍にいたいと思っている。

 なのはの気持ちを別にして、フェイト自身が望んで発した想いだ。

 考えていたよりも進んでるのかもしれない、とはやては思う。

 しかし、まだはやてには断定は出来なかった。

 証拠がない。

 それらしい事を口にしてはいるけれど、決定打が欠けている。

「……フェイトちゃん、聞いてもええ?」

「ん?何、はやて」

「ヴィータじゃない誰かが、なのはちゃんと同じ部屋やったらどう

や?」

「誰かって?」

「誰でもええよ。シグナムでもシャマルでもザフィーラでも」

「ザフィーラはちょっと違わないかな」

「ほなクロノ君とかユーノ君とか」

「ユーノは絶対に駄目っ!」

 不意にフェイトが叫んだ。

「あ…ご、ごめん」

 自分でも驚いたのだろう。

 慌ててフェイトは口元を押さえた。

 やはり、とはやては思う。

 まさか『絶対』まで付くとは思わなかったけれど。

 その言葉が欲しくて、わざとはやてはユーノの名を出した。

「何でユーノ君が一番駄目なん?」

「だ、だって。ユーノは男の子だよ」

「それやったらクロノ君も男やないか」

「クロノは私のお兄ちゃんだし、エイミィがいるし……」

「理由になってへんよ」

「そうかもしれないけど……でも……」

 困り顔のフェイトは、純粋に自分の心情を伝える言葉を探して迷っ

ている。

 ここまでか、とはやては肩の力を抜く。

 それでも、収穫はあった。

 フェイトはなのはを意識し始めている。

 それが恋だと気づいていないだけで、誰かに獲られたくないと思

いつつある。

「ごめん。自分でもこの気持ちがよく解らないから。上手く言えない」

「いいや。十分伝わったで」

「そう、かな?」

「うん」

 なのはの想いをはやては知っている。

 フェイトの気持ちも確信した。

「大丈夫やって」

 それならば、親友としてする事は一つ。

「今までのは、なのはちゃんが嫌だって言った場合の例え話やろ?」

 最後の一歩を踏み出すためのきっかけを作ってやるだけ。

「なのはちゃんがフェイトちゃんと同じ部屋を嫌がる訳ないやんか」

「…そうだといいな」

「二人の親友の私が保証したる。安心しぃ」

「ありがとう。はやて」

 微笑みを浮かべるフェイトに、拳を握ってはやては約束をする。

「さて。私はそろそろ行かんとあかん時間やから。先に失礼するわ」

「仕事?」

「そんなとこや」

「そっか。頑張ってね」

「ありがとう。フェイトちゃんも頑張りや」

「え?」

 瞳を瞬かせて真意を計りかねる顔を見て、楽しそうな笑みをはや

ては浮かべた。

「え、と。私は何を頑張ればいいのかな」

「まぁ、色々やな」

 それだけをはやては言う。

 親友が口出しする領域はもう終わった。

 ここから先は本人同士の頑張りどころ。

 後は見守るだけ。

「あぁ。せや、部屋の鍵を渡しとかなあかんね」

 言って、はやてはジャケットのポケットからカードキーを出した。

「引っ越しの日取りはもう決まっとるか?」

「まだだけど、私の方は引き継ぎも終わってるから。なのは次第かな」

「決まったら一応連絡くれるか?」

「解った。日にちが決まったら言うよ」

「ほな、またな。フェイトちゃん」

「うん、またね。はやて」

 部屋の入り口でフェイトと別れ、はやては一人、廊下を歩く。

 そして、フェイトとの約束を守るための対処法を考える。

「あとは、どうやってなのはちゃんをだまくらかすか」

 フェイトとは異なり、なのはは恋の自覚がある。

 ベッドを見れば、必ず文句を言うだろう。

 部屋を別々にして、とまではいかなくとも、ベッドは換えてと言

うに違いない。

「自覚がある分だけフェイトちゃんより厄介やからなぁ」

 さて、どうしたものか。

 思案するはやての口元はブツブツと何かを呟き続ける。

 そして、溜め息が吐かれた。

「……また命を掛けなあかん気がするわ……」

 フェイトもさることながら、なのはもそれなりの相手で。

 頭痛がする頭をはやては抱える。

「あー…。なんちゅー親友をもってしもたんやろ。しかも二人」

 二人の事は勿論好きだけど。

 時折、激しく疲れるのは、つい手を出してしまう己の性のせいか、

相手が悪いせいか。

「…とにかく。がっつり計画を立てんとな」

 フェイトとなのはの為に。

 そして。

「ベッドも自腹切ってるんやし。使ってもらわんと割に合わん」

 少しだけ自分の為に。

 軍事的策略を練るつもりで頑張ろうとはやては心に決めた。

- – - – - – - – - – -

はやてを書くのが楽しくて仕方ない。
でも、ちょっびと可哀相か(笑)
そして、こんなにも損な役回りが似合うキャラも珍しい気が…。
なのはVer.に続く予定です。 

リリカルなのは なのは×フェイト開設

金曜日, 1月 2nd, 2009

「リリカルなのは」の「なのは×フェイト」を開設しました。
とりあえず1本、突っ込み。
タイトルは「挨拶(なのフェイVer. そのいち?)」です。
なんか、書いててすんごい楽しかったです。はい。
でもなのはさん、暴走中(爆)

挨拶(なのフェイVer. そのいち?)

金曜日, 1月 2nd, 2009

 挨拶はどこにでも存在する。

 おはよう、おやすみ、いってらっしゃい、ただいま。

 起きてから寝るまで、挨拶は多種多様な形で利用される。

 良くも悪くも気持ちが込められている言葉だ。

 そんな挨拶には、一つの共通点があった。

 伝える者と受け止める相手。

 二つの存在が無ければ成り立たない言葉でもある。

 そんな点と点を繋いで線にする大切な挨拶にも厄介な面があった。

 それは伝える者と受け止める相手の思いが必ずしも一致するとは

限らない。

 使い方を一つ間違えると滑稽な事になりかねない難しい言葉でも

あった。

 - – - -

 機動六課のとある一室。

 そこはとても静かだった。

 室内には一人。

 デスクに向かうフェイトは黙々と仕事をこなしていた。

 はやてに報告が必要な書類と、己の判断で処理できる書類と分類

しながらフェイトは仕事を片付けて行く。

 それでも、まだ書類はデスクの片隅で山積みになっていた。

「やっぱり今日一日じゃ終わらないかな」

 デスクの片隅を陣取っている書類の残りを捲りながら、フェイト

は息をつく。

 最近は出動する事が多かったせいで、書類は溜まる一方だった。

 留守にしている間は、シャーリーが仕事を代行してくれていたけ

れど、フェイトじゃなければ処理できない書類はそのままになって

いる。

 朝から根を詰めているけれど、まだ終わりは見えない。

「ヴィヴィオが起きているうちに帰れるかなぁ…」

 泣きそうな顔でフェイトは呟いた。

 最近出来た、愛娘はとても可愛くて、大変愛らしくて。

 出来ることなら起きているうちに帰って一緒に御飯、それが無理

でもおやすみくらいは言いたいと思っている。

 けれど、現実は厳しくて。

 少し泣きたい気分にフェイトはなった。

「ヴィヴィオー……」

 悲しそうに呟くと、不意にコンソールが開き、モニターが現れた。

「はい」

 来客を表すメッセージに、執務官の顔でフェイトは応答する。

「フェイトちゃーん」

「なのは」

 モニターの中で手を振るなのはにフェイトは頬を綻した。

 コンソールを操作して、部屋の扉を開けると、笑顔のなのはが入っ

て来る。

「ごめんね。お仕事の邪魔しちゃって」

「大丈夫だよ」

 言って、散らしていた書類を一纏めにした。

「でもなのは、仕事は?」

「仕事はって……フェイトちゃん……」

 大きな溜め息をつくなのはにフェイトは首を傾げる。

「もうお昼だよ」

「え?」

 言われて、時刻を確認すると、昼を少し回った所だった。

「あれ?」

「あれ?じゃなくてね」

 先刻よりも盛大な溜め息がなのはから吐かれる。

「どうりでシャーリーが頼みにくるわけだよ」

「シャーリーが?」

「うん。フェイトちゃんが鬼気迫る勢いで仕事してるから、これ一

緒に食べてあげてくださいって頼まれたの」

「鬼気迫る勢いって……私、そんなんだった?」

「少なくともシャーリーにはそんな風に見えたんじゃないかな」

「そう、なのかな…?」

 確かに定時とはいかなくとも、ヴィヴィオが寝る前までには、と

仕事をしていたけれど。

 そんなに必死に見えたのだろうかと、フェイトは首を傾ぐ。

「だから、はい」

 デスクの上にシャーリーから貰ったビニル袋を置く。

「一緒にお昼食べよ」

「うん」

 微笑んで、休憩の用意をしようとフェイトはコンソールを閉めた。

 立ち上がり、壁際に移動しつつ、フェイトは聞く。

「なのはもコーヒーで良い?」

「うん」

 自分のマグカップと来客用のカップを出して、フェイトは飲み物

を用意する。

 その間に、ソファーに移動したなのはは、シャーリーからの差し

入れをテーブルの真ん中に置いた。

 湯気の立つカップを二つ持って、フェイトはなのはの向かいに座

る。

「はい、コーヒー」

「ありがとう」

 カップを取って、なのはは一口飲んだ。

「うん。美味しい」

「良かった」

「じゃあ早速、御飯食べよっか。私、もうお腹ぺっこぺこだよ」

 お腹を擦るなのはに苦笑しつつ、シャーリーからの差し入れをフェ

イトは出す。

 袋の中には、サンドウィッチ、パン、お握りが幾つかと、カップ

に入ったサラダが入ってた。

「なのは、どれが食べたい?」

「フェイトちゃんは?」

「私はどれでも良いよ」

「それは駄目」

「え?」

 瞳を瞬かせるフェイトになのはは言う。

「シャーリーがフェイトちゃんに用意してくれたんだよ。フェイト

ちゃんが最初に選ばないとシャーリーに失礼だよ」

 真っ直ぐな瞳で、真剣な声で言われて。

 浅はかな事を言ってしまったとフェイトは反省する。

「うん、そうだね。私が最初に選ばないと駄目だね」

 頭に浮かんだシャーリーに謝って、目の前のなのはにもフェイト

は謝った。

 そして、微笑む。

 見逃しそうになる些細な事でさえ、そこに含まれた相手の気持ち

になのはは見逃さなくて、丁寧に教えてくれる。

 少し鈍感な所があるせいか気づけないのが情けないけれど。

 優しく補ってくれるのが嬉しいとフェイトは思う。

「で、フェイトちゃんはどれにする?」

「んー。そうだなぁ」 

 並べられたお昼御飯を眺めて、フェイトが選んだのはサンドウィッ

チだった。

「私はこれにする」

「じゃあ私は、お握りにしようかな」

 言って、お握りを取ったなのはは、表面を包んでいるフィルムを

剥がし始める。

「あ、なのは」

 今、まさにお腹を満たそうとしていたなのはは、口を開けたまま

視線だけ、フェイトに向けた。

「いただきます。言ってないよ」

「あ……」

 すぅっと静かに口がお握りから離れ、照れたようになのはは頭を

掻く。

「にゃはは。失敗失敗。つい、食欲に負けちゃった」

「駄目だよ。ちゃんと感謝して食べなきゃ」

「うん。そうだよね」

「それに、ヴィヴィオが真似するようになったら困るよね?」

「う……ごめんなさい。気をつけます」

 母親としての責任を言われて、しょげるなのはは、しっかり反省

していて。

 解っているフェイトはそれ以上は怒らない。

 黙って、手を合わせて。

「いただきます」

 と、だけ言う。

「いただきます」

 そして、次いで聞こえて来た声に、静かに笑った。

 なのはと取り留めない話をしながらの昼食は、フェイトに優しい

休憩を与えた。

 フェイトの食が進む。

 仕事に没頭すると食事すら忘れる傾向があるフェイトにとっては、

意味のある休息の一時だった。

 何時もよりも多めでも胃に収まっていく。

「フェイトちゃんにしてはよく食べるね」

「そうだね。私もお腹空いてたみたい」

「みたいって……」

 溜め息をつくなのはにフェイトは首を傾げる。

「何時も言ってるよね。忙しくても御飯はちゃんと食べてねって」

「……食べてるよ」

「食べてたらシャーリーが私の所に頼みには来ないよ」

 至極尤もなご意見にフェイトは言い返せない。

「それに嘘は駄目だよ。ヴィヴィオが真似したらどうするの?」

「………ごめんなさい」

 反省して、ぺこりとフェイトは頭を下げる。

 怒ったり、怒られたり。

 仕事とは異なる忙しい昼食の中で出て来る名前は可愛い娘ばかり。

 怒られながら、本当の家族みたいだと、ほっこり幸せな気分にフェ

イトになった。

「そういえばフェイトちゃん、今日は何時くらいに帰ってこれる?」

「んー、まだちょっと解らない、かな。ヴィヴィオが寝る前には帰

りたいと思ってるけど」

 言うと、なのはがくすりと笑う。

「そっか。それで鬼気迫ってたんだ」

「…だから、そんなんじゃなかったって」

 本当にシャーリーにはどんな風に見えていたのだろうか。

 お昼休みが終了したら聞いてみようとフェイトは思う。

「なのはは?」

「私は何時もと同じくらいかな。あまり遅くなってアイリさんに迷

惑掛けても悪いし」

「ヴィヴィオも寂しがるし?」

「そうそう」

 頷くなのはは、お母さんだった。

「でもね。それだけじゃないよ?」

 ふと、口調が変わった気がして、フェイトはなのはを見る。

 静かな動作で立ち上がり、向かいから隣へと移動して来た。

 不思議そうに首を傾げると、にっこりと微笑まれる。

「私が早く帰りたいのはね」

「うん」

「フェイトちゃんが帰って来るの待っていたいから。なんだよ?」

 言われた、フェイトは一気に顔が熱くなったのが解った。

 そんなフェイトを楽しそうに眺めてなのはは続ける。

「だから、早く帰ってきてね」

「う、うん…」

 赤い顔で頷きながら、フェイトは考える。

 こんな時、どう返事を返せば良いのだろう。

 ありがとう。なのだろうか。

 それとも、私も早く帰りたいと、言えば喜んでくれるのだろうか。

 でも、どちらも返事にはなっていない様な気がして。

 どうしたものかとフェイトが困っていると、なのはが肩を押した。

「え?」

 無防備だったフェイトの視界が角度をつけて変化し、背中にソファ

ーの弾力が当たる。

「な、なのは?」

 見上げる形になったなのはを呼ぶと、満面の笑みでフェイトは微

笑まれた。

 その笑みに先刻まで感じていた早い鼓動に異なる心音が混ざる。

 例えるなら、危険アラート。

 素直に従おうと思ったが、しっかり肩を押さえつけられてフェイ

トは動く事すらままならない。

「フェイトちゃん、御飯食べ終わったよね?」

「う、うん。そうだ、ね」

サンドウィッチ以外にパンも一個食べたフェイトのお腹は満腹だ。

「御飯を食べ終わった後、フェイトちゃんはどうする?」

「え、と」

 フェイトの定番は、食後はコーヒーを一杯飲んで締め括る事が多

い。

 しかし、何故なのはは、この体勢で今、そんな事を聞いてくるの

だろうか。

 フェイトは不思議に思う。

「やっぱり御飯の後は、甘いデザートだと思わない?」

 先刻まで上っていたフェイトの血が、一気に引いた。

「ちょっ、待って!」

「うん。待たない」

 即答するとても爽やかな笑顔に、フェイトの危険アラートが激し

く鳴り響く。

 近づいて来る顔に逃げる事逃げようと思ってもしっかり肩は固定

されていて。

 動く事も叶わない。

 それでも、何とか逃げようと焦っていると、触れる寸前でなのは

の動きが止まった。

「いけないいけない。また忘れる所だった」

 失敗と呟いて、フェイトの顔の前でなのはは両手を合わせる。

「いただきます」

「使い方間違ってるからっ!!」

お昼の休憩が終わるまであと少し。

果たしてフェイトの運命は如何に………?

 - – - – - –

初のリリカルなのはで、なのは×フェイト。
なんか、書いててすんごい面白かったわー。

以下、おまけです。
VS部隊長さん。

  - – - – - – -

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