まこ亜美、静なつ、夏実×美幸を中心に気の向くまま書いている二次創作サイトです。

« 風邪
報告 »

このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

 天気予報が明日は雪と伝える寒い一月。

 冬休みも終わり、学生達はまた学業を勤しむ日々が始まった。

 長期休暇の後に待っているのは定番の定期テスト。

 休み中の学力が試される日を間近に控えた四人は火川神社で机を
囲んでいた。

 まことの隣に亜美が座り、向かうように美奈子とレイが座っている。

 木の机の文様は差ほど大きくはなく、四人の教科書とノートで完
全に完全に隠れていた。

「亜美ちゃん、ここが解らないんだけど」

「そこはね……」

 公式が覚えれないまことの数学を丁寧に亜美は説明する。

「それで、こうなるの」

「あぁ、そっかそっか」

 納得したまことは次の問いに移る。

「亜美ちゃん、この化学なんだけど」

「これはね……」

 公式を含めながらレイに亜美は読解する。

「なるほどね」

 理解し辛かった化学を理解したレイは忘れないうちにと同様の問

題で復習する。

「亜美ちゃん、これってどういう意味?」

「この意味は……」

 美奈子に聞かれた問題に答えようとした亜美が、一瞬怪訝な顔をした。

「美奈子ちゃん…帰国子女、じゃなかった?」

「そうよ」

 あっさり美奈子は頷く。

「バリバリの帰国子女よ。それがどうかした?」

「……ううん。何でもないわ。この文章の意味は……」

 帰国子女に英語を亜美は丁寧に説明した。

 まこと、美奈子、レイは考えあぐねた問題を亜美に教授を求める。

 三者三様の問い全てに答えられるのは流石亜美というところだろう。

 四人で勉強しているというよりは、先生一人に生徒三人という状況だ。

「美奈子ちゃん、この単語の意味、間違えて覚えてない?」

「あ、そっか」

「ここが間違ってたのねー」

 指を鳴らして、文章の意味を訂正しようと、シャープペンのお尻

を美奈子は叩く。

 しかし、芯は伸びなかった。

「あら?」

 もう一度、シャープペンのお尻を叩く。

 それでも、芯は1ミリ程度伸びただけだった。

「もぅ。折角人がやる気になってるのに、シャープペンがやる気な

くてどうするのよ」

「持ち主に似たんじゃない?」

 投げやりでお尻を叩き続ける美奈子に隣のレイは言った。

「失っ礼ねー。私はいつだってやる気十分よ」

「その割にはノートに英文以外の物が存在してるわよね」

「え?」

 レイの一言が美奈子の手がシャープペンに叱咤するのを止める。

「英文以外って、何が書いてあるんだい?」

 その隙を突いて、向かいのまことは身を乗り出した。

「あ、ちょっと!まこちゃん!!」

 美奈子が隠すよりも早くまことはノートを攫う。

 ノートの端には不可思議な絵が描かれていた。

 ページを捲ると、同じ場所にも描かれている。

 その前のページにも、前のページにも。

 最初のページから絵が描かれていた。

 スピードを付けて一ページ目から捲ると、絵はコマ送りされるよ

うに動く。

「……美奈子ちゃん」

 不可思議な絵の不思議な動きにまことは呆然とした。

「しょうがなじゃない!午前中からずっとお勉強で疲れてたのよ!!

シャープペンも言う事聞いてくれないしっ!」

「や、シャープペンは芯が切れただけなんじゃ……」

「どうしようもない力が私の勉強を妨げるのよ!きっとこれは世界

的な印籠だわ!!」

 なし崩れて泣き真似をする美奈子に亜美は考える。

「……陰謀。かしら」

「どっちにしろ単に美奈子ちゃんが勉強に飽きただけの事でしょ」

 慣れた様相で美奈子に呆れ、レイは筆箱を開けた。

「私の替え芯あげるからとっとと勉強する。試験近いんだからね」

 言って、芯のケースを差し出すレイに美奈子は言う。

「HBじゃなきゃ嫌」

「あんたね」

「だってレイちゃんの芯、Bじゃない。私いつもHB使ってるもの」

「貰う立場で贅沢言うんじゃないわよ。芯の濃さなんて何でも良い

でしょ」

「違うわ!使う道具にまでこだわってこそプロってものでしょ!?」

「何のプロだよ。それ」

 よく解らないプロの美奈子に突っ込みを入れるまことの隣で、亜

美は自分の筆入れを覗く。

「やっぱりHBは持ってないわ。私もBが主流だから。まこちゃんは?」

「あたしは確かあったような……あ、あった」

 促されたまことの筆箱にはBとHB、どちらの替え芯も用意されていた。

「美奈子ちゃん、あたしの芯あげるからさ。もう少しだけ頑張らないかい?」

 言って、差し出すと美奈子の頬が膨れる。

「……まこちゃんの裏切り者」

「何でだよ」
 渋々替え芯を受け取る美奈子がふと、差し出されたまことの手を

見つめた。

 顔を近づけて凝視する美奈子をまことは不思議に思う。

「どうかしたかい?」

「まこちゃんって、身長だけじゃなくて手も大きいのね」

「そうかな?」

「そうよ」

 間髪入れずに答えて、まことの掌と自分の手を美奈子は合わす。

「ほら。私よりも全然大きいわ」

「大きいっていっても、ほんの少しじゃないか」

 まことの掌は美奈子より若干広く、指先は関節の三分の一程度長い。

「あたしの方が身長あるしさ。美奈子ちゃんよりは手が大きいのは

当たり前だよ」

「……なんか、悔しいわね」

 言うなり、机の上に肘を突く。

「まこちゃん勝負よ!」

 右手の指をウォーミングアップのように蠢かしながらまことを美

奈子は誘う。

「って。何でそうなるんだよっ!」

「ここで引いたら愛野美奈子の名がすたるもの」

「すたる名も無いくせに」

「レイちゃんは黙ってて」

 レイを一睨みして美奈子は続ける。

「さぁ!まこちゃん!匙は投げられたわっ!!」

「美、美奈子ちゃん、それを言うなら匙じゃなくて賽……」

「大丈夫よ亜美ちゃん。そんなの今の私には何の問題は無いわ」

「そ、そうじゃなくて……」

 亜美の訂正も聞こえないくらい、美奈子は熱くなっていた。

 朝からの勉強に嫌気がさしていたのがありありと解る。

 受けるか受けまいか悩んだまことは美奈子に聞く。

「だ、大体腕相撲であたしに勝てると思ってるのかい?」

「思ってないわ。勿論、ハンデは貰うわよ」

 言って、右手の甲に左手を美奈子は当てる。

「いつでもかかってらっしゃい!

「かかってらっしゃいって、言われても…なぁ」

 今日は真面目に勉強しようと思っていたまことは頭を掻いた。

 定期テストは眼前に迫っている。

 ここで勉強しなければ後が厄介だ。

 本来なら当初の目的通り、勉強を続けるべきなのだろうけれど、

美奈子の気持ちもまことは解らなくもない。

 朝から続く勉強で頭の中は疲れていて、体を動かしたい気分だ。

 しかし、追試は避けたいとも思う。

 赤点を取った日には亜美に合わせる顔が無い。

「美奈子ちゃん勝負は今度にしないかい?」

 揺れる心の葛藤は亜美の存在で決着が着いた。

「ほらテストも近いしさ。腕相撲はまた今度って事で」

 やんわり勝負を避けようとするまことに美奈子は言う。

「あら敵前逃亡するつもり?それじゃあ木星の名が折れるわよ」

 守護星を出されたまことの片眉が上がる。

「それとも敵前逃亡するような弱い星だったかしらねー」

 口元に笑みを浮かべて挑発する美奈子にまことは机の上に肘を突いた。

「その名を出されちゃあ引く訳にはいかないね」

「そうこなくっちゃ」

 指を鳴らして迎える美奈子の手を組み、まことは臨戦態勢に入る。

「あとで吠え面かいてもあたしは知らないよ」

「それはこっちの台詞よ」

 活力を漲らせて火花を散らす二人の間で投げ出されたシャープペ

ンが転がった。

 それを拾いながら亜美は言う。

「ふ、二人とも?今日はお勉強会なんだから……」

「無駄よ。亜美ちゃん」

 間に割って入ろうとする亜美をレイは止めた。

「あの二人完全にやる気満々になってるもの。止めても無駄よ」

「でも…」

「それにね、亜美ちゃん」

 未だ二人を見比べて止めようとする亜美にレイは真理を言う。

「二人ともとっくに勉強に飽きてるもの」

 闘志を燃やす二人の気持ちを代弁したレイがゆっくりと参考書を

閉じる。

 それが合図だった。

 
「あー…右腕が痛い」

 火川神社の帰り道。

 肩から大きく腕を前後に振り回しながらまことは言った。

「あれだけ腕相撲すれば当然よ」

 苦笑するように笑って亜美は応える。

「だって美奈子ちゃん、しつこいんだもん」

 両手で挑まれた腕相撲の勝負をまことは当然のように一瞬でケリ

を突けた。

 しかしそれがいけなかった。

 瞬時に終わらされた勝負を美奈子は納得しなかったのだ。

 即座に再挑戦を申し込まれ、それをまことは受けた。

 そして、勝った。

 更に挑戦を申し込まれ、まことは受けた。

 やはり、勝った。

 それでも納得しない美奈子はまた挑戦を申し出た。

 勿論、まことは勝った。

 ここで八百長でも良いから美奈子に花を持たせてあげれば良かっ

たのかもしれない。

 とことん挑み続ける美奈子にとことん勝ってしまったお陰で、腕

相撲は三時間の長丁場となった。

 どれだけ軍配が返ったか解らない。

 亜美も二十二回までは数えていたけれど、そこで数えるのを諦めた。

 レイに至っては端から数えようともしなかった。

 夕暮れまで続いた勝負に切れ目が見えたのは美奈子の体力の限界

が来た頃。

 息を継ぎながら言われた『今日はこれ位にしておいてあげるわ』

という捨て台詞は今もまことの耳に残ってる。

「まさか明日も挑んで来る気なのかなぁ」

「それはきっと無いわ」

 困り顔のまことに亜美ははっきりと言った。

「まこちゃん、腕にかなりの疲労が残ってるでしょ?」

「うん。それなりに」

「なら美奈子ちゃんはもっと疲労してると思うわ。多分明日は筋肉

痛なんじゃないかしら」

「あ、そっか」

 日頃から体力作りを怠らないまことと異なり、美奈子はものぐさ

な傾向がある。

 その気になれば目を見張るような実力を発揮するけれど、日々の

鍛錬に励む性ではない。

 運動神経や即座の判断で行動する天性の勘はまことを上回る。

 それに伴う俊敏さは誰もが舌を巻く。

 ただ、それを伸ばす努力をする気が本人にはあまりない。

 言うなれば、隠した爪を研ぐ気がない鷹のようなものだ。

 更に言えば、美奈子は力よりも技を駆使するタイプだ。

 腕相撲のような力勝負ではどうしてもまことに分がある。

 それは美奈子自身も理解しているからこそ一番勝負からハンデ付

だったのだろうけれど。

 負けても諦めないのもまた美奈子だ。

「にしてもさ。そんなにあたしの手、大きいかな」

 美奈子と勝負する事になった大元をまことは見つめる。

「普通だと思ってたんだけど」

「まこちゃんは身長があるもの。美奈子ちゃんよりは大きいんじゃ

ないかしら」

「そりゃまぁ…そうなんだけどね」

 身長が高ければ自然と各パーツも大きくなるのは自然の摂理で。

 理屈はまことも解っている。

 ただ、その身長にコンプレックスを抱いている以上、あまり嬉し

くはない。

「亜美ちゃん、ちょっと右手出してくれる?」

「え?」

 瞳を瞬かせる亜美に、まことは自分の右手を広げた。

 意図を察して亜美が掌を広げる。

「こ、こうかしら?」

 呼応するようにまことは自分のそれを合わす。

「亜美ちゃんとだと、関節一個分位違うかな」

 空を切る指先をまことは動かした。

 亜美の指先を第一関節よりやや上くらいで感じる。

 掌も亜美より大きく包み込めそうだ。

「実際に包めるもんなぁ」

「え?」

「あ、何でもない」

 心の声が口を突いたまことは笑って誤魔化す。

「やっぱり亜美ちゃんとだとあたしの方が大分大きいね」

「そ、それはまこちゃんの方が身長が高いからで…。まこちゃんの

手が特別大きいとかじゃなくて…!」

「解ってる解ってる。大丈夫だって」

 気持ちを察して必死で答弁する亜美を宥めながらまことは笑う。

「小さくなんて出来ないしさ。仕方ないよ」

「でも……」

「これはこれで良い事もあるからさ」

 言って、合わせていた右手の指を亜美にまことは絡めた。

「ほら。亜美ちゃんと手繋ぎやすいだろ?」

「ま、まこちゃん…っ」

「それにさ。手が大きいとこういう役得もあるんだ」

 言って、まことは亜美の顔を両手で包んだ。

「亜美ちゃんに触れやすいだろ」

 熱を計るように額に額を擦り付けると、息を飲む様に亜美が身を引く。

 それでも離さないでいると、完全に茹で上がった亜美の頬がまこ

との掌をじわり熱くした。

トラックバックURL
« 風邪
報告 »

コメントはまだありません »

コメントはまだありません。

このコメント欄の RSS フィード TrackBack URI

コメントをどうぞ