まこ亜美、静なつ、夏実×美幸を中心に気の向くまま書いている二次創作サイトです。

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運命の轍(神無月の巫女・千歌音×姫子)

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 夜闇で光る猫の瞳のような月が部屋の窓からベッドを覗く。

 蒼く澄んだ淡い光は白いシーツを更に白く映えさせ、曇りを一切寄り付かせない。

 枕から流れる栗色の長い髪は穏やかで、涙に濡れた頬はもう乾いている。

 規則正しい寝息を立てるのに、包帯が巻かれた右手はもう何所にも行かないで
というように千歌音の指に絡み離さない。

 左手を動かなさいように千歌音はゆっくり体を起こした。

 息を殺して、幼子のような姫子に顔を近づける。

 安心しきった寝顔。

 あれだけ酷い事をして、無理やりその体を奪って泣かせた。

 なのにまだ、こんなにも身を委ねてくれる。

 純粋に好きでいてくれる。

「…姫子」

 吐息の掛かる距離で、千歌音の瞳が辛そうに歪んだ。

 このまま唇を重ね、呼吸を忘れられたらどれほど楽だろうか。

 微かな情動と心を締め付ける罪悪感に突き動かされそうで、千歌音が唇を噛む。

「ん…」

 ふと姫子が寝返りを打った。

 右手をそのままに、仰向けに体を転がす。

 胸に刻まれた太陽の痣が千歌音に追い討ちを掛けた。

 突きつけられた運命に目を見開き、顔を逸らす。

 対として刻まれた背中の月は酷く痛い。

 この想いの代償は世界。

 この命の報酬は愛しき者の生。

 幾度も繰り返された運命は、まるで轍のように心に跡を残す。

 平行を辿る跡は、決して交わることは無い。

 どこまでも真っ直ぐに、対で地平線まで伸びる。

 その轍が途切れた時、世界は大蛇の物となり世界は終結を迎える。

 それは、かつての陽の巫女の死を無意味にし、同時に姫子への裏切を表していた。

 己の掌を千歌音は苦々しく見つめる。

 記憶が甦ったあの時、同時に思い出した感触。

 最期の儀式で己が想い人を手に掛け、世界を選んだ穢れた手。

 他に方法が無かったとしても、世界を元に戻す為だったとしても。

 キリっと千歌音が想いを噛み千切った。

 握り締める掌に爪が食い込む。

 ゆっくり千歌音は姫子から離れた。

 仰ぐように夜闇の瞳を見据える。

「ここで…止める訳には、いかない…」

 自分に言い聞かせるように千歌音は月に放つ。

 運命を呪いながら千歌音は瞳を閉じた。

 そして愛しく思いながら瞳を開ける。

 久遠の運命は過酷で、最期まで無情の悲しみに包まれる。

 だけどそれは、幾度転生を繰り返しても必ず会える証。

 唯一の救いのような出会いは何よりも嬉しくて、誰よりも幸せを与えてくれる。

「だから私は…」

 視線を落とし、千歌音はゆっくり姫子の頬に唇を寄せた。

「好きよ姫子。…誰よりも」

 何時までも、と瞳で紡ぎ千歌音は誓う。

 必ず護ると。

「貴女に幸せを」

 心より微笑んで、立ち上がる千歌音に、繋がった手と手が離れて落ちた。

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