まこ亜美、静なつ、夏実×美幸を中心に気の向くまま書いている二次創作サイトです。

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共鳴(MADLAX・マド=マガ)

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「さよなら」

 重い銃の引き金を優しい微笑みが軽く引いた。

 轟音が轟く。

 今まで人と呼ばれていた肉が眉間に一つの穴を残してただの塊と化す。

 銃口から紫煙が立ち昇る。

 マドラックスは動かない。

 塊に銃口を向け続ける。

 最期を見届けても最後まで気を抜かない。

 闇の世界で生き抜く為の鉄則は、マドラックスの体に染み付いていた。

 何も考えなくても良い。

 体に任せれば習性が身を守ってくれる。

 1分程そうしていただろうか。

 微動だにしない塊にゆっくりと銃が下ろされた。

 オーストリア製のオートマティック銃。

 グロック・モデル17の装弾数は17発。

 残弾は16発。

 安全装置が掛けられる。

 ホルスターに戻された銃が一番マドラックスの腕を知っていた。

「…暑いわ」

 仕事を終えたマドラックスの長髪がゆらりと風に舞う。

 エージェントという激しい仕事をしなやかなブロンドの髪は感じさせない。

手櫛で乱れがすらりと直る。

 着崩れしたダークグリーンのジャンパーを正し、マドラックスは空を見上げた。

 今にも泣き出しそうな空は、湿度だけを先に下ろしている。

 しつこく纏わり付いてマドラックスを離さない。

赤いインナーシャツの首元をマドラックスは引いた。

「お風呂入りたいな…」

 肉の塊よりも明るい空は果てまで続いている。

 マドラックスの額を汗が拭う。

 風が凪いだ。

「―――っ!」

 刹那の動きでマドラックスが反応した。

 同時にホルスターの銃が開放される。

 「誰?」 

銃口が辺りを探る。

 誰もいない。 

 誰かいる。

 姿は見えない。

 見られている。

 周囲を見回すマドラックスの視線が、微弱な気配を辿って泣き始めた空を移す。

 頬に雫が当たった。

 ぽつぽつと増える涙がマドラックスを濡らす。

ほぅとマドラックスは息を吐いた。

「…帰ろ」

 見切りをつけるように銃が下ろされる。

 雲の涙で張り付いた前髪を振り払い歩き出す。

「あ、そうだ」

 ふと、マドラックスが顔を上げた。

「御飯、何食べよう」

 肉の塊の横で足が止まる。

 ジャンパーが雲の涙にじわりと濡れ、硝煙が掻き消される。

「でも、お風呂が先かな。うんお風呂」

 普通の非日常で当たり前の日常を思う血に慣れた手は肉の塊を振り返る事無く歩き出した。

 

 スプリングの効いた広いベッドの上で古ぼけた絵本が音も無く捲られる。

 古びた表紙の絵本。

 中には、勾玉とも胎児とも取れる絵が3つ並んでいた。

 不可解な絵の下には四大文明のどれにも属さない古代文字。

 空白を嫌うようにびっしり文字が本を埋め尽くしている。

 数箇所に渡りページが失われた絵本は、それだけで本と呼ぶに値しない。

 その上、不可解な絵と古代文字で生成された時代すら覚束無い本。

 持ち主である17歳のマーガレットには到底読めるとは思えなかった。

 それでも、愛しそうにページが捲られる。

 ベッドに寝そべり、雑誌を読むようにページが捲られる。

「どうしてだろう…」

 ぽつりとマーガレットが呟いた。

「どうして好きなんだろう…」

 読めない古代文字は心が安らぐ。

黴臭い中で微かに感じる匂いは懐かしい。

 勾玉のような胎児の絵は何かを思い出させる。

 それは過去なのか未来なのか。

 それとも本当の現実なのか。

「此処は…何処なんだろう…」

 平和な日常の裏側は混沌としていて思考さえも闇に隠す。

 ぼんやりしたマーガレットの瞳が見開かれた。

 風が誘う。

 禍々しいくらいに明るい光が部屋を満たす。

マーガレットを呼ぶ。

「…月」

 ゆっくりとマーガレットは立ち上がった。

 窓枠に手を掛け、浸かれたように月を見入る。

「赤い…月…」

 しつこい湿気が部屋の中に流れ、マーガレットに纏わりつく。

 意思があるように絵本がページをぱらぱら捲った。

 キィンと張り詰めた弦のような音。

 鼓膜を突き抜け脳髄へと駆け上がる。

 TVもラジオも消えている殺風景な部屋で、音波のような音だけが人の脳に直接木霊した。

 首に掛ける湿ったタオルでマドラックスは耳を塞ぐ。

 乾き切らない髪から雫が滴り落ちた。

 言葉にならない音の声。

 不快な音がマドラックに話し掛ける。 

「何なの?」 

 壁に止められた勾玉のような胎児の一枚の絵をマドラックスは見た。

 左側の淵が引き千切られたように破片にまみれた絵は古ぼけて色褪せている。

記号のような元素のような古代文字が本当の自分を垣間見せて誘う。

 「…あなたなの?」

 鼓膜に声が反響した。

「あなた…なんですか?」

 赤い月が脳に返事をした。

「私を見ているのは」

 出会いを求めるように。

「私に話し掛けるのは」

 未来を知っているように。

「あなたは…」

 運命を共鳴するように。

「「誰?」」

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