向けられた背にすらりと流れる艶やかな黒髪。
お澄まし顔の視線の先には一冊の本。
ゆっくりとページが捲られる。
一緒にいても気に留めてない風体は仮の姿。
本当は、敏感な気を巡らして私を見ていてくれる。
それは最近気がついた事。
きっと、気づいている事に彼女は気づいていない。
だから知らない振りをする。
そう、本当は私の方が一枚上。
その証拠に…。
息を殺してそうっと近づく。
衣擦れの音に肩がぴくりと震える。
一度止まって、走った緊張が解れるのを待つ。
だるまさんが転んだをするように音一つさせない。
頃合を見計らって敏感な気の綻びを縫う。
彼女は振り向かない。
そうっと両の腕を開く。
視線は本に向けられたまま。
隙のある腰に向かってゆっくりと腕を回す。
ぴくんと体が揺れた。
視線が本から外れ、驚きの表情が向けられる。
「…何よ?」

「別に。ちょっと甘えてるだけ」
「子供じゃないんだから」
呆れた溜め息が零された。
それも計算のうち。
「そうね」
だから微笑んで感じる体温を抱きしめる。
ほらね?
私の勝ち。
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