まこ亜美、静なつ、夏実×美幸を中心に気の向くまま書いている二次創作サイトです。

« 舞乙(10話より)
03-12-26 »

舞乙(2話より)

このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

アリカをサギヌマに任せたナツキは学園長室にシズルと共に戻った。

「先刻はお前の機転に助けられたな。お陰であの娘を保護する事が出来た」

「礼なんてええんよ。うちはこの学園の為にしただけさかい」

 微笑んで、お茶の準備を始めたシズルは硝子の小さなカップに紅の液体を注ぐ。

「だが、セルゲイに渡さずに済んだのは事実だ」

「それは単なる結果どす」

 あくまで功績を自分の物としないシズルに、ナツキは苦笑する。

「相変わらずだなお前は」

「そうどすか?」

「そうだ。学生の頃から変わらん」

 何事も飄々とこなし、現在まで羨望を受け続けても何一つシズルは変わらない。

 お茶が好きなのも。

 急ぐ事が嫌いな事も。

そして、率先してナツキをフォローする事も…。

「何時も助けて貰ってばかりだな。私は」

「うちは何時かて…学園、の事を考えているだけどすえ」

 一瞬、学園の後に間があった気がしてナツキが首を傾げる。

「今…」

「ん?どうかしはったん?」

 にこりと微笑まれ、ナツキは言葉に詰まった。

「いや何でもない…」

 気のせいだと呟いて、視線を逸らすナツキに、変わらない筈のシズルの表情が 一瞬切なく曇る。

「あんたこそ…変わらんやないの」

 入学したての頃から、コーラルになっても。

 マイスターになり五柱に選ばれても。

 こうして学園長の任を受けた今でも。

 ナツキは何も変わらず、何も気づかない。

「シズル、聞いてるか?」

「…え?」

 自分の秘めた世界に吸い込まれそうになっていたシズルは一瞬反応に遅れた。

 何を言われたのだろうと思う。

「私の話聞いてなかったのか?らしくないぞ」

「あ…堪忍。久しぶりに舞ったさかい。少々疲れたんかもしれまへんな」

「大丈夫か?」

 身を屈め、シズルの頬にナツキは掌を当てる。

 シズルの頬が薄紅に染まった。

「疲れてるなら下がっていいぞ」

「だ…大丈夫さかい。おおきに」

 少し身を引いてシズルはナツキの掌を逸らした。

 頬が熱い。

 ほんの少し触れられただけだというのに、鼓動が逸る。

「ならいいが。それより気になる事があるんだが…聞いてもいいか?」

「あの子の事どすか?」

 努めて平静を装いシズルは聞き返す。

「いや、お前の事だ」

 頬を掻くナツキに、きょとんとシズルは瞳を瞬かせる。

「うちの事?」

「そうだ」

 こくりとナツキが頷く。

「その…お前の機転の事なんだが…」

 こほんと咳払いを落として、体裁を整えてからナツキは聞いた。

「私には、あの娘の耳元にお前が…息を吹きかけたようにしか見えなかったんだが…」

 うろうろとシズルの前を右往左往するナツキはどうにも落ち着かない。

「本当はどうやって気絶させたんだ?」

 とりあえずとはいえ、状況を良い方向に向けれたというのに何故こんな些細な事が気に なるのか。 

その理由が今ひとつナツキ自身理解出来ない。

だが、どうしても気になって気になって。

ナツキは聞かずにいられなかった。

「あらー。ナツキにしては細かい事を気にするんやねー」

 揶揄を含んだ声に、ナツキの顔が真っ赤に染まる。

「う、煩い!何となく…気になっただけだ…」  

顔を背け、不貞腐れるようにナツキは唇を尖らせた。

 生徒には絶対に見せれない幼さにシズルがくすくす笑う。

「で、どうなんだ?」

「ナツキが見た通りどすえ」

 言って、シズルはお茶を一口含む。

「うちはただ耳元に息を吹きかけただけどす」

「そ、そうか…。って、何でそれだけで気絶させられるんだ!?」

 納得してるのか驚いているのか解らない表情に、シズルはふと思いつく。

「ナツキ。うちええ事思いつきましたわー」

 顔の横でぱんと両手を合わせてシズルは微笑む。

その悪びれない表情に覚えがあるナツキがひくりと頬を引き攣らせた。

「な、何を思いついたんだ…?」

 訝しみながら、恐る恐る問うと、ゆっくりシズルは立ち上がる。

「同じ事をナツキにすれば、よぉ解るんちゃいますの?」

「いっ!?」

 後ずさるナツキにシズルは近づく。

 その微笑みはとても嬉しそうで、嬉しそう過ぎて。

 ナツキには悪魔の微笑みに見えた。

「ちょ、ちょっと待て!」

 逃げようとするナツキの腕を取り、シズルは逃がさない。

「大丈夫。ナツキは、ぜーんぶうちに任せてくれればええんどす」

「な、何を任せるんだ何を!!」

「全部、どす」

 言って、つんとナツキの頬を突付き、シズルは抱き締める。

 ぴくんとなつきの体が強張った。

「覚悟は、ええ?」

 耳元で囁き、ナツキの顎にシズルは手を掛ける。

「お、おい。何を…」

「再現するだけどす」

 本当はこのまま唇を重ねたいけれど。

 沢山、色々な箇所にキスを降らせたいけれど。

 唇を近づけながらシズルは熱情を堪え、目線の合図まで再現する。

 だが、その再現は失敗した。

 ナツキからシズルは目を離せない。

 再現出来たのは、あの時の意味だけ。

 妬いて欲しいという想いだけだった。

「…シズル?」

 真っ直ぐ見つめたまま微動だにしないシズルにナツキは声を掛ける。

「あ…堪忍」

 我に返ったシズルは、心であかんと呟き、自分を抑え込む。

「ほな、いきますえ」

「う、うん…」  

体に力を入れ、身構えるナツキの耳元にシズルはゆっくり唇を近づけた。

 アリカにした時よりも熱い吐息を吹きかける。

 びくんとナツキの体が震えた。

 だが、意識ははっきりしている。

 むしろ、全ての神経が敏感なくらいにシズルを意識している。

「あの時、うちはこうしただけどすえ?」

 言って、ナツキをシズルは開放した。

「そ、そうか…よく、解った」  

まだ温もりの残る耳にナツキは触れる。

 熱い。

 左耳だけ二人分の熱が篭っているようだ。

「しかし…私は、何ともないな…?」

「それはナツキが慣れてるからとちゃいます?」

「え?」

「学生の頃から鍛えてる人は違うって事なんやろねー」

 感慨深く頷くシズルに色々な、それこそ色んな事をされた思い出がナツキに蘇る。

「だ、誰が慣れさせたんだ!誰が!!」

「あら?うちのせいどすか?」

「他に誰がいる!」

「それは…他に、誰にも。そういう事をされへんかった。って事やろか?」

 素知らぬ顔で追求するシズルの瞳は真剣だ。

 だが、ナツキはその瞳には気づかず。

「あ、当たり前だ!」

 左手を上着のポケットに突っ込んで、憮然と答える。

「そうどすか」

 心底安心したようにシズルは微笑んだ。

 その笑顔が眩しくてナツキが視線を逸らす。

「他の奴になんて…誰が許すか…」

「え?」

「何でもない」

 言って、ナツキは身を翻した。

「それより今後の事だが」

 振り返ったナツキはもう学園長の顔をしていた。

「はい」

 応えるシズルもまたサポートへと戻る。

 そして、作戦会議に入る二人の想いもまた各々の身の内へ。

 互いが互いの想いを伝えるにはもう少し平和が必要だった。

トラックバックURL
« 舞乙(10話より)
03-12-26 »

コメントはまだありません »

コメントはまだありません。

このコメント欄の RSS フィード TrackBack URI

コメントをどうぞ