まこ亜美、静なつ、夏実×美幸を中心に気の向くまま書いている二次創作サイトです。

« 妊娠-終-
»

妊娠-番外編-

このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

「なつき、抱いとくれやす」

「はいーーーーっ!?」

 不意に言われた静留の一言に思わずなつきは、友人の物真似をした。

「い、いきなり何を言い出すんだ!お前はっ!?」

 叫んで、なつきは窓の外の太陽を指す。

「真昼間から変な事を言うなっ!」

「せやかて夜は早ぅ寝てまうし」

「そ、それはそうかもしれないが……。遅くまで起きてる時だってあるじゃないか…」

「それ、大半がゲームに夢中になってるやないの」

「そう…でもないぞ。………多分」

 以前は、夜更かしや徹夜が日常茶飯事のなつきだったが、真面目に学校に登

校するようになってからは眠るのが早い。

 布団に潜って、ものの数分で寝てしまう事もしばしばある。

「だ…だからと言って、日曜の昼間から、その、そんな事いきなり言われてもだな……」

 顔を赤く染めて、しどろもどろのなつきに、静留は首を傾げた。

「うちは、いきなりやないと思いますけど?生まれてもう一月経ちますし」

「だ、だから!昼間からそう言う………何の話だ?」

 生まれて一月と言われて、今度はなつきの首が傾ぐ。

「やから、なつきはまだこん子を抱っこしてへんやろ?」

 言って、腕に抱く赤ん坊となつきを静留は交互に見る。

「生まれてもう一月も経ちますさかい。なつきもそろそろ抱っこしてあげへんと。こ

ん子が可哀想どすえ」

 無邪気に笑って手を伸ばす赤ん坊に微笑む静留を見つめて、呆然となつきは呟く。

「…子供の話、だったのか……」

「何の話やと思ったん?」

 赤ん坊に負けない位、無邪気に問われて、千切れんばかりになつきは首を横に

振った。

「な、何でもない!何でもないぞ!ただの私の勘違いだ!!うん!」

 真っ赤な顔で長い黒髪を振り回すなつきに微笑んで、静留は赤ん坊に話しかける。

「変なママやねー」

 意外な呼び方になつきは驚いた。

「お、おい。ママって…」

「うちがお母さんで、なつきをママって覚えさせよう思てたんやけど。お父さんの方

が良かったどすか?」

「いやお前がママで、私が…お母さんじゃ駄目なのか?」

「うちはそれでも構へんよ。なつきはお母さんの方がええんどすか?」

「そうだな。その方が…って、ちょっと待て」

「まだ何かあるん?」

 不思議そうな静留を頭の先から爪先までなつきは眺めた。

 今日は出かける用事も無いせいか、静留はラフな洋服を着ているが、日常でも

着物を好んで纏う事も多々とある。

「…やっぱり私がママで良い」

「そうどすか?」

「あぁ」

 かなりこそばゆい呼ばれ方ではあるが、着物を着ている静留がママと呼ばれる

よりはマシだとなつきは思う。

「あいつがママだと違う意味になりそうだ」

 子供が呼ぶ姿を想像しただけだというのに、酒場の見知らぬ親父まで頭に浮か

んでしまい、なつきは頭を振る。

「それよりなつき」

「ん?」

「こん子を抱いとくれやす」

「いっ!」

 赤ん坊の抱っこを勧める静留になつきの頬が引き攣った。

「い、いや…私は……」

「何言うてますのん。なつきの子供でもあるんどすえ」

「そ、それは解っているが、まだ首も据わって無いんだろ…?」

「ちゃんと支えて上げれば大丈夫さかい」

「だが、もし落としたら……」

「なつきが落とす訳あらへんやないの」

「それは解らないじゃ、ないか」

 逃げ腰のなつきを静留は見据えた。

「……そないにこん子が嫌いなん?」

「え?」

「嫌いやから抱っこしたがらへんの?」

 不意に悲しみに満ちた瞳で見つめられなつきは慌てた。

「そ、そんな訳ないだろ!」

 叫んで、引けた腰の分だけなつきは身を乗り出す。

「私とお前の子だぞ!可愛いに決まってるじゃないかっ!!」

「ほな抱っこしてくらはるんやね」

 先刻の泣きそうな顔がけろりと微笑んだ。

「ママが抱っこしてくらはるって。良かったねぇ」

「……お前」

 きゃっきゃ笑う赤ん坊と一緒になって笑う静留になつきは拳を握り締めた。

「この……詐欺師」

 巧みな手つきで手綱を操られたなつきは悔しさを噛み締める。

「さ。なつきそこに座っとくれやす」

 ソファーから床へ移る静留になつきは渋々従う。

「この高さなら万が一落っことしても大事には至らへんさかいに」

「頼むから…抱く前に怖い事を言わないでくれ」

 汗が滲む掌をなつきはズボンで拭った。

「さぁ渡しますえ」

 ゆっくりと赤ん坊を渡そうとする静留になつきの体が緊張で強張る。

「ほ、本当に大丈夫なんだろうな」

「大丈夫さかい。赤ちゃんはなつきが思っているより丈夫なもんなんどす」

 心配性を微かに笑って、なつきの腕に静留は赤ん坊の頭を寄せた。

「まだ首が据わってへんさかい。こうして支えて……」

 首筋から背骨に添って腕を回させ、ゆっくりと赤ん坊のお尻をなつきの膝に乗せる。

「それからこっちの腕でお尻を押さえてあげるんどす」

「こ、こうか?」

「そうそう」

 にじり寄るように赤ん坊を支える腕を動かすなつきは大変必死で、静留は忍び

笑いを漏らす。

 半前屈みの不恰好ながらも、赤ん坊の首を据わらせ、初めてなつきは赤ん坊を

抱いた。

「な?大丈夫でっしゃろ?」

 上手と静留は拍手を送る。

「自分の赤ちゃんを抱いた気分はどうどす?」

「動けん…」

「え?」

 どんな感想が零れるかと期待する静留に、なつきは震える声で言う。

「動いたら落っことしそうで動けんぞ…これ」

 抱いたままの姿勢から微動だにしないなつきを見つめて静留は呆然とした。

「頼むから助けてくれ。腰が、痛くなってきた。腕も…限界が近い」

「もぅ。あんたって人は……」

 親としての気持ちはしっかり持ってくれているものの、母親にするにはまだ早い

伴侶に静留は溜め息をつく。

「あ、こら」

 不意になつきが驚いたような声を上げた。

「胸を触るな。というか握ろうとするな。おもちゃじゃないんだ」

 動けない体を必死で捩るなつきを赤ん坊の手が追いかける。

「だから触るなって言ってるだろ」

 相手が赤ん坊だけに本気で怒る訳にもいかず、なつきは困り顔だ。

 小さな防御を繰り返していたなつきだが、赤ん坊は遊んで貰っていると思ったの

か止めない。

 小さな笑い声を上げてなつきの胸を捜す。

 やがて赤ん坊の手がなつきの手に触れた。

「お前は静留二世だな」

「どういう意味どす」

 さりげなく言われた台詞に静留はさりげなく反論する。

「ったく。もう好きにしろ」

 諦めて、胸に触れさせていると赤ん坊がきょとんと眼を瞬かせた。

 何度かふにふにと手が動く。

「ん?何だ?」

 確かめるような触れ方になつきが赤ん坊を見ると、くしゃりと顔が歪んだ。

 同時に、けたたましい泣き声が上がる。

「うわっ!急に何だっ!!」

 突然泣かれて、なつきは驚いた。

 離す訳にもいかず、あやす方法も知らないなつきは顔を右往左往させて、静留

を呼ぶ。

「お、おい静留。こいつは急にどうしたんだ!?」

 泣きそうな顔で助けを求めるなつきに、小首を傾げて静留は考える。

「あぁ…いつもうちの胸触ってるせいやね」

「はぁ?」

 解らないと口を開けたままのなつきに寄って、赤ん坊を静留は抱き上げた。

 慣れた手付きで赤ん坊を抱いて、静留はあやす。

 ぺたりと赤ん坊の手が静留の胸に触れた。

 同時に泣き声が止む。

「うちと違う胸やったからびっくりしたんやねぇ」

「なっ!」

 すっかり機嫌が直っている赤ん坊をなつきは睨んだ。

「静留より小さくて悪かったなっ!」

「そうやのうて」

 四つん這いで赤ん坊を威嚇するなつきを静留は窘める。

「何時もうちがこん子を抱っこしてはるやろ?」

「あ、あぁ」

「それで、うちの胸に触れながらこん子は眠るんどす」

「だから私の胸じゃ満足しなかったんだろ」

「やから、ちゃいますって」

 胸の大きさにこだわるなつきに静留は苦笑する。

「赤ん坊にとってお母さんの胸言うんは一番安心する場所なんどす」

「…そうなのか?」

「そうどす」

 頷いて、赤ん坊を静留は見つめた。

「抱っこすれば一番触れる箇所やし、お乳もここから貰いますやろ?」

「あ、あぁ…」

「それに心臓の音も聞こえますさかい。お腹ん中にいた頃を思い出すんやろねぇ」

 静留の胸に顔を寄せたまま赤ん坊はうとうと眠ろうとしている。

 その顔は幸せそのものだ。

「やから、なつきもちゃんと抱っこしてあげんと、ママやって覚えて貰えへんよ?」

「うっ……」

 同じ親なのに赤ん坊の認識は歴然としていて。

「ど、努力する」

 毎日抱っこしようとなつきは思う。

 そんな親の誓いを立てる親の気持ちも知らずに赤ん坊は完全に眠りについていた。

 起こさないようにそぅっとなつきが寝顔を覗く。

「…可愛いな」

「せやろ?」

「うん」

 素直に頷くなつきに静留は微笑で言う。

「何やったらお乳も上げてみます?」

「なっ!?産んでないのに母乳なんて出るか!」

「せやったらうちの吸ってみます?」

「吸うか!」

「やったらうちがなつきの……もご」

 静留の口を手で押さえてなつきは続きを遮った。

「タチの悪い冗談は止めろ。教育に悪い」

 真っ赤な顔で本気で睨んでくる母親のなつきに、喋れない静留は肩を竦めて了

解する。

「ったく。お前はお母さんなんだぞ。こいつがそういう冗談覚えたらどうするんだ」

「うちはいつも本気なんやけどなぁ」

「なおさら悪いわっ」

 二世を育てそうな静留になつきは頭を抱えた。

 それでも、赤ん坊を抱く静留の顔は母親で、腕に抱く子供はなつきの子供でもある。

 どちらの性格が大きく反映されるかは、まだ先の話だけれど。

 一つだけ解っている事がなつきにはある。

「賑やかになりそうだ」

 疲れるような嬉しいような複雑な気分で、静留と赤ん坊をなつきは見つめる。

 なつきの子育てはまだまだ始まったばかりだった。

トラックバックURL
« 妊娠-終-
»

コメントはまだありません »

コメントはまだありません。

このコメント欄の RSS フィード TrackBack URI

コメントをどうぞ