まこ亜美、静なつ、夏実×美幸を中心に気の向くまま書いている二次創作サイトです。

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「お大事にして下さい」

「おおきに」

 一袋の薬を受付で貰い、静留は病院を後にした。

 先日の衝撃的な発覚から気づけば一ヶ月が経とうとしている。

 あれから二週間に一度、静留は産婦人科に通院していた。

「経過は良好どす。と」

 病院の入り口でなつきにメールで報告して、携帯を静留は鞄に仕舞う。

「今日はええ天気やわぁ」

 ゆったり動く鰯雲を見つめて、静留は微笑む。

 お腹はまだ然程、膨らみを帯びていないが、昨日はお腹の中央が動いた気がし
た。

 定期健診で計った体重は今まで生きて来た中で一番重く、それはまだまだ増え
るであろう。

 なのに、切なくは無く。

 着実に一つの命が体内で育っている証拠は、逆に嬉しく思う。

「名前も考えなあかんねぇ」

 呟いて、静留はお腹を撫でた。

 人間の赤子は十月十日で生まれる。

 まだ七ヶ月もあるが、考えずにはいられない。

 心が弾む。

 重い身体は軽い。

「なつきの意見も聞かへんとね」

 なつきを想った静留は声を押さえて笑う。

 最近のなつきは特に落ち着きが無い。

 テレビを見ていても共に布団に入っても、眠る直前まで、静留を気にかける。

 買い物は必ず連いて来て、荷物を持ってくれる。

 寄り道をして本屋に行けば、姓名判断の本の前や妊婦向けの本の棚を何度も
往復する。

 手に取るにはまだ勇気が足りないらしく、本屋を出るとなつきは肩を落とす。

 流石に、産婦人科の定期検診だけは懲りたらしく、最初以来、一緒に来てはくれ
ないが。

 明らかに今までのなつきと態度が違っていた。

「なつきはお父さんやもんなぁ」

 言って、ふと、静留は首を傾ぐ。

「お父さん……は、ちょおちゃいますなぁ」

 子を宿している静留が母親なら相手のなつきは父親だ。

 でも、なつきも女の子。

 父親とはちょっと違う。

「お母さんが二人……」

 考えた静留はまだ見ぬ子を憂う。

「ええよね…?お父さんがおらんでも…」

 言って、まだ見ぬ子に静留は問いた。

 父親がいないのは、何時か悲しい思いをさせるかもしれない。

 何故父親がいない代わりに、母親が二人いるのか。

 物心がつけば、疑問にすら思うだろう。

 その時、何と答えれば良いのか。

 答える覚悟は静留には無い。

 今は、まだ。

 それはこれから身につける自信だ。

 なつきと二人で、子供が幸せだと思えるだけの家庭を築く責任だ。

「気張らんとなあかんね」

 気合を入れる意味を込めて、今宵の夕飯は存分に腕を振るおうと静留は決め
る。

 帰路を変えて、スーパーへの道へと変更する。

 横断歩道を渡ろうとする静留は浮き足立っていた。

 そう、幸いに浸っていたのだ。

 それは、何もいけない事ではないけれど。

 ほんの一瞬。

 慎重さを忘れさせた。

 横断歩道の信号が青だからと言って、全ての車が止まるとは限らない。

 そんな当然とした事実を静留は片隅に追いやってしまった。

「―――っ!」

 気づいた時には既に遅く。

 眼前に迫る車に無防備な静留は成す術が無かった。

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