繋ぎ方

by 瑞穂

9 2月
2009

 のほほんとした日曜日の昼下がり。

 レイの神社に行くついでにと亜美と寄った本屋でまことが見かけたの

は仲の良さそうな恋人同士だった。

 取り立てて目立つ服装をしていた訳ではない。

 本当に普通の恋人同士だったけれど、二人がしていたソレが、まこと

の目に留まった。

 気にした事がなかったソレも、一度気になるとなかなか頭から離れない。

 失礼にならない程度に距離を置いて、ソレをまことは暫く眺めた。

 そして、自分と亜美の間の記憶を逡巡する。

「そういえばした事ない、なぁ」

 近しい事はよくするけれど。

 まことの記憶の限りではソレを行った覚えはない。

「……ちょっと、やってみたいな」

 呟いて、本屋の奧へと視線をまことは向けた。

 最奧の壁一面に並ぶ分厚い書籍の数々は、一般的に手にする人が少な

い、所謂専門書が集約されたエリアだ。

 本屋に入るなり一直線にそこに向かった亜美は未だに自分の世界から

戻って来ない。

 時折、棚から本を取り出しては真剣に中身を吟味している。

 流石にそのエリアに長時間付き合うのは難だったまことは、比較的近

いエリアで料理本を読んで待っている最中だ。

 本屋からレイの神社までは徒歩15分位の距離がある。

 それだけあれば十分試す事は出来るだろう。

 一つ、企みを胸に秘めて、壁に掛かっている時計をまことは見た。

 まもなく30分を経過しようとしている。

 そろそろレイの神社に向かわないと約束の時間に間に合わない頃合いだ。

 あまり遅くなっては待っているレイに悪い。

 ついでに美奈子の揶揄も強くなってしまう。

 立ち読みしていた料理本を棚に戻して、まことは亜美の元へと歩んだ。

「欲しい本は見つかったかい?」

 肩越しにまことは話しかける。

「まこちゃん」

 見上げるように顔を上げた亜美は嬉しそうに手にしていた本をまこと

に見せた。

「ええ。これを買おうと思ってるの」

 亜美がまことに見せたのは辞書と同等の分厚い書籍。

 タイトルは日本語で書かれているものの、その意味を解するだけで時

間が掛かりそうな難しさを匂わせている。

 相変わらずだな、と思わずまことは苦笑いをした。

「良かったね。良い本が見つかって」

「ええ」

 まことには難攻不落な本でも、亜美には貴重な本なのだろう。

 大切そうに両腕で胸に抱く姿はとても嬉しそうだ。

「じゃあさ。そろそろ行かない?あまり遅くなるとレイちゃんや美奈子

ちゃんが心配するしさ」

 入り口付近のレジをやんわり示すと、慌てて亜美が腕時計で時間を確

認する。

「あ、ごめんなさい!直ぐにお会計済ませてくるわ」

「ん、あたしは店を出た所で待ってるよ」

 急ぎ足でレジへと向かう亜美の背に言って、まことは出入り口へと向

かう。

 レジには二人、会計を待っている人がいた。

 亜美の前で待っている人は、先刻目に留まった恋人だ。

 一人が本を持っており、もう一人は付き添いと言った感じで横に並ん

でいる。

 まことが気になったソレも、会計待ちのせいか今はしていない。

 横目で見ながらまことは店を出た。

 邪魔にならないようにと隅の壁に凭れ掛かると、その二人が出て来る。

 笑って話しながら、街の中へと消える並ぶ背中をまことは見送った。

 そのまま人の流れを見つめると、ソレをしている人がちらほらと目に

つく。

 気恥ずかしくなり、視線を外したまことは頬を掻いた。

「うーん」

 亜美に拒否されるとは思わないけれど、吃驚はする気はする。

 上着のポケットに両手を突っ込んで、まことは硝子越しに店内を覗く。

 レジで丁度、亜美が会計を済ませている。

 あと数分もすれば店から出て来るだろう。

 短く息を吐いて、両手を上着のポケットに突っ込む。

 掌を握ったり開いたりを繰り返すと、自動ドアの開く音がした。

「まこちゃん、お待たせしちゃってごめんなさい」

「ん、無事に買えた?」

「ええ。大丈夫」

 肩に掛けているトートバックを亜美は揺する。

 トートバッグは本屋に立ち寄る前よりも見た目で重さが変化していた。

 中には勉強会の為の参考書やノート、勉強に必要な物が一式入ってい

る筈だ。

 それらはほぼ亜美の為というよりも教えてもらう人の為に用意されて

いる。

「バッグ重いだろ?あたしが持つよ」

「大丈夫よ。そんなに重くないから」

「でも今から勉強教えてもらう訳だしさ」

 亜美が断る事は予測していたまことはトートバッグに手を掛けてその

まま引き寄せる。

「これ位、持たせてよ」

「で、でも重たいし……」

「いいからいいから」

 ね?と微笑で、まことは空いている手をポケットから出す。

「で、亜美ちゃんはこっち」

「え?」

 不思議そうに掌を見つめる亜美に微笑んで、まことは言う。

「手、繋いでもいいかい?」

「え…ええ」

 少し躊躇しながら差し出された掌がまことと重なる。

「あ、違う違う」

「え?」

 繋がった手を一度離して、指を絡ませてからまことは掌を密着させた。

「ま、まこちゃん!?」

「まだした事なかったからさ」

「…それはそうだけど……でも……」

 まことがした手の繋ぎ方は所謂、恋人繋ぎで。

 掌と掌の密着度が高く、伝わる体温に亜美は思わず周囲に視線を這わす。

「ちょっとだけ。ね?」

「み、美奈子ちゃんにばれたら揶揄られるし……」

「大丈夫だよ。レイちゃんの家に着く前に離すから」

 それは少し寂しいけれど。

 美奈子の鋭い追求はまことも出来れば勘弁したい。

「駄目?」

 焦って困り果てる瞳に窺うと、真っ赤な顔は俯いて指先に力を込めた。

「ありがと」

 嬉しそうにまことは微笑む。

 指先から掌まで。

 何時もよりも繋がりが深い指先は、少し擽たかった。


んで、手を離すのを忘れて美奈子ちゃんに揶揄られます。

4 Commentsまこと×亜美, セーラームーン(停止中)

4 comments

  • Comment by
    セン
    10 11月 2013

    こんにちは
    突然申し訳ありません!
    セラムンのまこ亜美、美奈レイがすきでサイトを巡り巡ってであったこのサイト様がドンピシャで私の好み(上からっぽいですかね?でしたらすみません。)こんなサイト探してた!という感じでですね、小説たのしく読ませていただいたのがもう去年の今頃のことです。もうまこ亜美、美奈レイはかかれないのでしょうか?我儘ですがぜひあなた様の書かれた話が読みたいです。
    いきなり現れたものがズケズケと申し訳ありません。久々に読ませて頂いてコメントしようと思い至った次第です。すみません。失礼しました。

  • Comment by
    セン
    10 11月 2013

    こんにちは
    突然申し訳ありません!
    セラムンのまこ亜美、美奈レイがすきでサイトを巡り巡ってであったこのサイト様がドンピシャで私の好み(上からっぽいですかね?でしたらすみません。)
    こんなサイト探してた!という感じでですね、小説たのしく読ませていただいたのがもう去年の今頃のことです。
    もうまこ亜美、美奈レイはかかれないのでしょうか?我儘ですがぜひあなた様の書かれた話が読みたいです。
    いきなり現れたものがズケズケと申し訳ありません。久々に読ませて頂いてコメントしようと思い至った次第です。すみません。失礼しました。

  • Comment by
    セン
    10 11月 2013

    こんにちは
    突然申し訳ありません!
    セラムンのまこ亜美、美奈レイがすきでサイトを巡り巡ってであったこのサイト様がドンピシャで私の好み(上からっぽいですかね?でしたらすみません。)こんなサイト探してた!という感じでですね、小説たのしく読ませていただいたのがもう去年の今頃のことです。もうまこ亜美、美奈レイはかかれないのでしょうか?我儘ですがぜひあなた様の書かれた話が読みたいです。
    いきなり現れたものがズケズケと申し訳ありません。久々に読ませて頂いてコメントしようと思い至った次第です。失礼しました。

  • セン様、拙いSSを読んで頂きましてありがとうございます。
    またとても嬉しいコメントを頂いてしまい恐縮です。
    現在は別のジャンルに熱が傾いてしまっていますので、セラムンは書けないと思います。
    申し訳ありませんm(__)m
    ただまたセラムンのアニメが開始されますので、書きたいエピソードがあれば書くかもしれません。
    折角楽しみにされているところ本当に申し訳ないのですが、ご了承下さい。


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