23 5月
2015

ようようと暖かくなり始めた季節。
肌を刺す様な寒さは遠退き、日差しは柔らかさを増して空に止まる時が長くなった。
ほこほこする起毛の服は役目を終えて、代わりに羽織るのは先日買った春用のセーター。
ホットカーペットの温度を弱くしても寒さは身に染みない。
それでも夜半になると、寒さは少し戻ってきていて。
肌をゆるゆると這う掌の体温は心地良い。
「未来、寒くない?」
「ん……平気」
セーターとその下に着ていたシャツは捲り上げられて胸の腕で丸まっている。
毛糸の肌触りが気に入って買ったけれど、間違いなかったとぼんやり思う。
胸を覆う下着は背中のホックが外されて、ぶら下がるだけになっていた。
その隙間に滑り込むように胸が掌が胸を覆う。
伝わってくる熱に自分の体温が上がった気が未来はした。
露わになった横腹に感じていた外気はもう寒さよりも刺激だ。
その上、先端を掌で転がされて、摘ままれて。
「ん、あっ……」
寒さなんて、思わず零れた吐息と共に飛んでしまった。
もう片方の膨らみに感じる熱はもっと高い。
体内から直接吐き出される息が肌を濡らして、吐き出した唇が食む。
「は、あっ……っ!」
しゃぶるように吸われて、未来の背中が仰け反った。
縋るものが欲しくなり、頭を抱え込む。
癖のある柔らかい髪の毛が揺れて、目元が嬉しそうに微笑んだ。
「そのまま抱えてて」
「こう、されるの、好き……なの?」
「うん。未来の気持ちよさが伝わってくるもん」
「……ばか」
さりげなく、爆弾発言されて未来の頬が羞恥に染まる。
その羞恥もほんの瞬きの間だけで。
再び胸に顔を埋められて、先刻の寒さのように飛んでしまった。
静かな部屋で沸き立つ水音は、ぬめるように濁っている。
断続的に零れる荒い息が喉を震わせて徐々に速度を上げていく。
脇腹を擽るように這っていた掌がストッキングの上から太股を撫で上げた。
「ん……」
期待なのか、慣らされてしまったのか。
自然と膝が立ち、腰が上がる。
「未来、ストッキング好きだよね」
「……あったかいから」
「でも、こういう時はちょっと大変かも」
言われて、熱で逆上せそうになっていた脳裏に思考が戻る。
肌を締めつけて全体を覆うストッキングは確かに大変かもしれない。
とはいえ、そういう時だけストッキングを履かないようにしていたら、誘う合図のようになってしまう。
それは出来れば遠慮したいけれど。
響に任せっきりというのは止めた方が良いのだろうか。
普段ならば、羞恥から思いつきもしない取り留めない考えを未来が巡らせていると。
ふわりと中心に触れられた。
ぴくりと未来の身体が反応する。
「っ……」
擦るように擦りつけるように、響の指先が蠢く。
布地越しがもどかしい。
適所に触れられているのに温もりは薄く、奥までは充てがわれない。
まるで焦らされているようで自然と未来の腰が動く。
「……あ」
つと、指先が動きを止めた。
ゆっくりと指が離れて、未来が吐息を吐く。
前髪を払って首を上げると、響の眉がハの字に曲がっていた。
「未来、ごめん」
「な、に……?」
「ストッキング、伝線させちゃった」
「え……」
身体を起こして確認すると内股に一本白い線を引かれている。
「その、爪を引っかけちゃって」
「ん……しょうがないよ」
前髪を掻き上げて、未来は息を吐いた。
普段なら小言の一つも口をつくけれど、ストッキングに気に掛ける余裕がない。
突然、止められたせいで熱が行き場を失っている。
熱い、と思う。
「弁償するから」
「……弁償はいいから」
響の袖を引っ張って未来は引き寄せる。
「こっち……なんとか、して」
手に手を添えて、燻った熱の中心に響を導く。
くりっと中心の膨らみを響の指で擦り、未来の顎が上がる。
「ふ、ぁ……」
「……未来」
状態を察したのか、添えていた手を離しても響の指先は擦るのを止めなかった。
再開された行為に未来の呼吸が乱れて。
布越しのもどかしさは一層増した。
響の背を掻き抱いて未来がせがむ。
「ん、あ、あ……ひ、びき……」
「直接がいい?」
「ん……」
微笑みが囁いた直接の響きに未来はこくりと頷く。
両足を響に絡ませて、求める。
「そんな風にされちゃ脱がせられないよ」
「だっ、て……」
「しょーがないなぁ」
苦笑いが髪の毛を撫でて、耳に届いたのは、ビリッと衣を破る音だった。
内股の辺りが外気に触れる。
「伝線したストッキングはもう履けないから破いてもいいよね?」
「も、破って……く、せに……」
「うん」
悪ぶれないで未来の唇を響は塞ぐ。
喉の奥を突いて、上の歯、下の歯と撫でて、上顎を擽る。
舌の裏を掬われた時、未来の身体が大きく震えた。
ずるりと唇が離れて、未来の声が零れる。
「は、あ、ぁ……」
身体の熱が高まり、腰より下でくすぶる。
早く開放されたいと思っても、まだ直接響は触れようとしない。
代わりに衣を破る音がまた聞こえた。
「なんかこれ。イケナイことをしてる気分になるね」
「し、らない……」
響のように爪に引っ掛けたり、知らないうちに伝線している事はあるものの、故意にさせた事は未来にはない。
まして、伝線ではなく意図的に破くなんて考えは及びもしなかった。
最ももう今はそんな事はどうでもよいくらいに未来は、準備が整っている。
響の肩口を噛んで訴えると、響の指先を感じた。
中心の脇、下着に添うように響の指先が上下する。
「未来、気持ちいい?」
確かに先刻のように布越しではない。
肌に響の指先を感じる。
しかし、体温はほど遠いどころか殆ど感じられず、また身体の熱を解消出来るほどの刺激もない。
それどころか、煙を上げそうなくらいに熱は燻っている。
潤んだ瞳で訴えると、したり顔が笑んだ。
つと対抗意識が未来に湧き上がった。
わざと触れて欲しいとこを避けて、余裕の笑みを見せてくるというのなら……。
響の服を引っ張って未来は口付ける。
「んっ。み……」
驚く響の舌を絡め取り、言葉を未来は奪う。
こんなに熱くて喘いでいるのに、一方だけそんなに冷静なのは、ずるい。
舌を絡めて、吸い上げて、甘く食んで。
ぴちゃりと滴りそうになる唾液を唇をずらして啜る。
こくりと、喉を鳴らして響の余裕ごと飲み下せば、熱に当てられた瞳が出来上がっていた。
首に腕を絡めて、身体を未来は密着させる。
「ひびき……」
耳から脳を揺るがすように囁くと、自身の身体に、衝撃が走った。
「あ……っ!」
一気に突き上げられる。
痛みと悦と甘さが未来を揺さぶり、しとどと濡れた中心が、更なる水音を響かせた。
未来の耳に届くのは、余裕のない荒い呼吸音。
それも直ぐに耳を撫で回す舌の音に切り替わった。
突き上げながら、敏感な箇所をピンポイントでなぶる響に未来の肩が反射的に竦む。
しかし、決して響は手を緩めようとはしなかった。
優しくて、優し過ぎる人が、ようやく見せてくれた剥き出しの情と熱。
痛くないわけではないけれど。
その痛みすら望んでいたモノの一つで。
響の背に爪を立てて、未来は受け止める。
「あっ、や、ひ……ひびき」
「はっ……み、く……みく……」
睦言のように名前を呼ばれて、響を未来は掻き抱く。
くしゃりと、響の髪の毛が乱れた。
首筋に歯を立てると、響が息を飲む。
「っ……」
痛いとは言われない。
それどころか瞳が濡れて、切ない表情に変貌した。
先刻よりも強く未来は噛む。
「んっ、いた……」
少々強過ぎたようだった。
柔く噛む。
「あっ……」
吐息が零れた。
微かな痛みと余韻が残るように加減すると、響の身体が震える。
「気持ちいい?」
「……う、ん」
お昼の太陽のような明るさの時は照れてしまう右往左往するのに。
夕暮れの太陽は素直だった。
幾度と未来は甘噛みを繰り返す。
その度に切ない声や扇状的な声が響から落ちた。
しかし、響の指は未来から抜かれる事はない。
全力全開の性急さは失っているが、その分緩やかに温もりを感じられる所作で、階段を昇るように未来を刺激し続けている。
くちくちと敏感な箇所を弄り回されて、響を震わせながら肌を味わって。
軽い攻めに転じてみたものの、どちらかと言えばこのまま響の腕の中で果てたい。
甘噛みを未来は強くした。
「痛っ。未来、それは痛いよ……」
ちょんと口付けて、こつりと響の額に自分の額を当てる。
「みく?」
瞬く瞳を見つめて、もう一度未来は口付けた。
今度は深く、誘うように。
時間をかけてねっとりと舌を絡ませる。
舌に乗せた真意に気がついたのか、穿っている指が動きを早めた。
「ん、はぁっ」
恍惚とした声が漏れて、ずるりと未来の唇が外れる。
その唇を追い、今度は響が塞いだ。
深く、ねっとりと、舌が絡み合い。
強く、締めつけるように、未来が響を絡め取る。
一段と奥まで未来を響は突く。
ぶるりとした震えが未来の中心から足先まで流れる。
響に縋っていた腕から力が抜けて。
沈むように未来は倒れ込んだ。

 

 

 

「――く、みーく、未来―」
どこか遠い声に未来はゆっくりと目を開けた。
霞む視界に心配そうな響の顔が映る。
何度か瞬きをしてを視界をクリアにすると、安心したように安堵の息が響から漏れた。
「未来、大丈夫?」
「ん……私、気を失ってた?」
「うん。ほんの数分だけど」
ゆっくりと身体を起こすと響の手が腰に回り支えられる。
引かれるままに身体を寄せて、響の肩に未来は凭れ掛った。
「ごめん。無理させちゃったかな?」
「……大丈夫。ちょっと疲れただけだから」
「そう?」
「……うん」
実際に疲れや、解放された後の脱力感はあるけれど。
無理をしたつもりは未来にはない。
「響は、大丈夫?」
「うん?」
「疲れてない?」
「あー、うん。へーきへっちゃら」
へらりと笑って、未来の額に響は口付ける。
「未来の気持ち良さそうな顔を見てたら、疲れなんて吹っ飛ぶもん」
「……ばか」
まだ興奮が冷めないのだろう。
響にしては大胆な発言だ。
ほぅと息を吐いて、凭れたままで未来はホットカーペットに目を向ける。
これでもかと残る乱れた後は、冷静になってくると存外恥ずかしいものがあった。
ベッドならばシーツにくるまってやり過ごす羞恥も今はその隠すべきシーツがない。
響から離れて、乱れたシャツに手を伸ばす。
「響、ちょっと後ろを向いててくれる?」
「ほぇ?」
「……着替えたいから」
「え? 着替えちゃうの?」
意外そうな響の返事は、それこそ未来には意外だった。
振り向くと、へらりと笑って、未来を背から抱き締める。
「ちょ、響」
「もう少しこのままがいいなー」
「こ、このままって……」
抱き締められるのは好きだけれど。
この半裸に近い状態で暫く、というのは躊躇が伴う。
どうして、ベッドにいかなかったのだろうか。
今更のような後悔が未来に過ぎる。
「それに、さ」
項に口付けて、響は舌を這わす。
かぷりと噛まれた時、びくりと未来の肩が跳ねた。
「ひ、響」
「この続きがまだだし、ね」
「続きって……」
噛んでいたのは未来で、噛まれていたのは響で。
その続きというと、そういうことで。
振り返ると、響の瞳は潤んで濡れたままだった。
「駄目かな?」
「……駄目じゃないよ」
向きを変えて、正面から響を未来は抱き締める。
「続き、しようか?」
「……うん」
未来の手を引いて、背から響は倒れた。
響に覆い被さり、口付ける。
角度を変えて何度も唇を重ねて頬に口付けると、擽ったそうに響が笑う。
「あ、一つお願いしていい?」
「なぁに?」
「ストッキング、脱がしたい」
耳を傾けていた未来が一瞬止まった。
そして、ゆっくり身体を起こして、にこりと微笑む。
「変態っ!」
すぱーんと、小気味の良い音が響の脳天から鳴った。

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